第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「俺は獣だ。我が君に害なすもの全てを噛み殺す、蒼い獣だ!」 モノから放たれている蒼い稲妻に、ルルは興味本位で人差し指を当てるとバチリと音を立て指を焦がした。 「いたっ。すごいね! これがプラズマってやつ? 私、フェンリルで狼だからね。これでも嗅覚には自信があるんだ。あなた、時渡りの姫の生まれ変わりでしょ? だからその駄犬も命がけで守ろうとする。なのに可哀そうだね。当の主は古の契約について知らないんだもん」 「黙れ……」 「そこの駄犬の代わりに教えてあげるよ。ケダモノたちはその力の大半を契約の名の元姫に預けてる。結果、残りの力を燃やすことで生きてるんだけど……それが何を意味するか分かる? 力を使えば使うほど命を燃やし、そして燃え尽きる。ねぇ、君の命どれくらい残ってるのかな?」 ルルの話に怒りのボルテージが頂点に達したモノは姿を消し、光の速さで再び噛みつきにかかってくるモノを、ルルは右腕で受け止め不敵な笑みを浮かべるが、先程は弾かれた雷牙は今度はルルの右腕を貫通し、噛み傷と雷撃による強いショックに、ルルは明らかに不機嫌な表情を浮かべる。 「まだ、私が話してるんだけどなぁ」 「残された命が長い短いなんて俺には関係ない。長くたって短くたって俺にできることは限られているからな。我が君に害を与える物はすべて俺の敵だ。でも、君にはまだ今の俺じゃ物足りないみたいだね」 モノは笑顔で再び魔力の圧を上げていくと、魔力の質が変わり、蒼い稲妻はより澄んだ蒼に変わっていくが、それと同時に、強がってはいるものの吐血量も増え、時折体が揺らぐ。 ルルは今までは遊びの一環であったが、目の前に文字通り他者のために命を懸けて戦おうとする存在に戦闘意欲がこみあがり、白銀の狼にその姿を変えた。 「君、面白いね。あの小娘のために命を懸けるかぁ。なら、私も少しだけ本気を出しちゃおうかな?」 「……もうやめて。もうやめて!」   モノが再び攻撃態勢に入ろうとした時、ユキハは絶叫し大粒の涙を流す。 「私のために傷つくのはもうやめて! これ以上もうみんなが傷つくのは見たくない! なんでみんなと契約したのか忘れたの⁉」 「「「え?」」」   涙ながらに叫ぶユキハのその一声に三人はピクリと反応した次の瞬間、モノの体は後方へと吹き飛んだ。
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