第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「んな⁉」   突然のことに目を丸くするモノであったが、目の前には黒刀を持つ黒髪の青年が立っており、安堵の息を漏らす。 「この子を泣かせたのはお前か? お前には重い罰を受けてもらう必要があるな」 「はぁ? あんた誰? ……て、あんたアモン? なるほど、あたしたちの仲間を傷つけたのは冥府の王ってわけか」 ユキハが視線を上げると、目の前には黒髪で黒い角が生え、背中には紫色の水晶のような羽を持っているが、どこか見覚えがあるシルエットで声質の男が凛として立っていた。 「その声……ゼロ先輩? 来てくれたんすか!」   トウヤの発言に頷いたゼロに、一気に限界を越えたユキハは泣きつく。 同時にゼロは、ユキハが小刻みに震えているのに気づき、ゼロはユキハに尋ねた。 「ユキハ、戦いが怖いのか?」   その言葉にも過剰に反応するユキハをトウヤに託し、ゼロは立ち上がるとルルに向けて刃を向ける。 「見ての通り俺は鬼――冥王の一角アモンの生まれ変わりだ。ユキハ、お前が怖いというのならお前の刃に、お前を傷つける存在がいるのならお前を守る盾となってやる。だから今はよく見ておけ」 「邪魔だなあ!」   話の途中にルルは威嚇とともに無数の風の斬撃を放つが、ゼロはユキハの前で当たるに任せる。 傷は切り裂かれた部分から即座に回復し、攻撃の合間に一気に距離を詰め、ルルの前右足を黒刀で切り落とす。 唐突の攻撃にルルは一瞬ひるむものの、残された腕を振り下ろすのだが、ゼロは空高く飛び軽々とかわした。 「冥王のくせに……この私に傷をつけるなんて! 絶対許さないんだから。あの駄犬はともかく、あんたがなんで姫を庇うのかわからないけど、あの子を傷つけた方が面白そう!」 ルルは一瞬で切り落とされた腕を再生させ、標的をゼロからユキハに移し、禍々しい笑みでその狂爪をユキハに振るう。 恐怖とあまりの圧迫感にユキハは動けず、トウヤは咄嗟にその身をもって守るしかなかった。 「「ユキハ⁉」」 モノのケアをしていたカレンとモノもまた駆けつけようとするが、それには距離があり絶望の声をあげる。 しかし、いつまで経っても二人にその爪が届くことはなかった。 「な、なんで……」 「あいつには手を出すなと言ったはずだ」
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