第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「モノ。自我を失うまで頑張ったんだな。誇り高いお前のことだ。ユキハに手を出したと知ったら一番後悔するのはお前だろう。そんなことはさせない。……今楽にしてやるからな」   ゼロは覚醒具を外すと、再び先程見せたアモンへ鬼化し、今度は、深紅に染まった眼光でモノを捕らえる。 それに対し無意識に危険を感じたのか、モノも一度距離を取ったうえで、再度雷爪でゼロを斬り捨てようとした瞬間、動きを止めた。 「カレン先輩。あれどうなってんの?」 「ゼロ先輩がモノに流れる魔力の動きを全て塞き止めてる。それで一時的だけど動きを縛ってるんだよ」 「手荒い方法になってすまない」   ゼロは動きを止めたモノの首元に噛みつくと、音を立てて何かを飲み込み始める。 しばらくすると、モノの放つ眼光は解け、抵抗しようとする意志が消失し、ゼロはモノを解放した。 「いつもごめんねぇ、ゼロ兄。成るなって言われてたのに、約束破っちゃった」 「気にするな。お前がいなければユキハ達は守れなかった。解放したのは腕だけだな。それで済んで本当によかった」 「はは……俺もまだわがきみと生きたいってことなのかな」 「阿呆。お前がいなくなったら、ユキハは悲しむ。見てみろ、今代の姫は心配性だからな」 ゼロがゆっくりとモノの体を起こすと、そこにはモノのことを想い悲しみの目で見つめてくるユキハの姿が目に入る。 「俺のためなんかに、あんな顔をするなんて……」 「『夢現領域展開:グラフィス』」 ゼロは片手で夢現領域を展開させると、その中からモノが巻いていた物と同じベルトを取り出す。 「お前の力を再封印するからな。カレン、手伝え」 「あ、うん。でも――」 カレンはゼロに同意すると同時に、気まずそうな視線を返す。 それを受けたゼロは深いため息をついた。
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