第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「そうか。そうだな」   ゼロはモノを地面に寝かせると、ユキハ達の元に向かう。 近づいてくるのはゼロだということはわかっているのに、自分たちを守ってくれたのはゼロだとわかっているのに、今まで見てきた行動とその容姿に畏怖を覚え、二人はじりじりと後退する。手を差し出そうとしたゼロだったが、二人の気持ちを察し手を握りしめた。 「……俺が怖いか? ならそのままでいいから聞け。これからモノの魔力を再封印する。魔力の再封印はかなり負荷がかかる行為だ。 ……だからお前らは目と耳を塞いでいろ」   二人は自分達が取った行動に罪悪感を抱きながらも、ゼロの指示におとなしく従う。 「そう、それでいい」 「ゼロ兄、ひとおもいにやってよ」   ゼロはカレンに視線を送ると、カレンはモノを包む領域を展開し、詠唱を始める。 「『我呼び出すは天界の蔓。地の魔力を吸い、今ここに芽吹かん』」   詠唱と共にモノを囲む四か所からツルが生え、それぞれモノの手足首に巻き付くと、その部分からどんどん魔力を吸われ、魔力を得たツルはより一層強くモノを縛り、完全にその自由を奪う。 「いくぞ」 「ぎゃあぁぁぁぁ⁉」   ゼロは一気に新たなベルトを上腕に巻き付け、モノが元のサイズになるまで縛り上げるが、それに伴いモノは常軌を逸する痛みと苦しみに襲われ、絶叫する。 「私のせいで、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」   耳を閉ざしても、心を逸らしても届くモノの叫び声にユキハはぼろぼろと泣き崩れる。 トウヤも同様、何の役にも立てなかったことに対し自己嫌悪に襲われるが、ユキハを支え、封印の一部始終を見守る覚悟を決めた。 「あんた、本当にそれでいいの?」   カレンの言葉にトウヤは真剣な趣で頷くと、ユキハを連れゆっくりとモノの元へ向かう。 「来たのか。ちょうど今封印が終わったところだ。カレン、解放してやれ」   カレンがツルを消すと、そこには子供の姿に戻ったモノがすやすや寝息を立てていた。
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