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14.お菓子が崩れちゃった
アガリはちゃんと毛布を見つけてくれた。抱きついてお礼を言って、大事にベッドの上に広げる。じっと見つめて、端の部分を撫でた。ここ、破れていたと思う。出かける前にお母さんが直してくれたのかも。
絨毯の上を走って、寝室の外で靴を履く。座って履こうとした僕をディーが抱っこした。靴も拾って履かせながら歩き出す。
「たくさんの人を呼ぼうかと思ったんだが、ルンが大変だからな。こちらから遊びに行こうと思う。構わないか?」
「うん」
ワクワクするね。いろんな人とお話ししたり、触れ合ったりできるの。精霊の子は小さくて、透明っぽくて、悪戯好き。魔獣の子は僕と寝転がって遊んでくれた。今度会う人はどんな人だろう。
今日は遅いから出かけない。でも明日からお家の外へ出るんだよ。
「アガリ、あーん」
口を開けておやつをもらう。柔らかい皮に包んだ丸いお菓子は、甘いお豆が中に入っていた。こんなの初めて食べたよ。ディーがくれたのは、甘いお豆の四角いケーキだ。こっちも口まで運んでもらう。もぐもぐと頬張って食べれば、味がちょっと違う。
まん丸なお菓子を掴んで、ディーとアガリにあげようとした。割ったら、ぐにゃりと指が中に入っちゃう。慌てて持ち直していると、中身が溢れてきた。
「まんじゅうが崩れるぞ」
「どうしました?」
二人が心配して手を貸そうとするのを断り、なんとか三つにする。でもボロボロで、元の姿と全然違う。アガリが僕にくれた時は、ちゃんとした形だったのに。悲しくなって、ぽろぽろと涙が落ちる。
理由を聞かれて、しゃくりあげながら話した。ちゃんと割って、皆で食べたかったこと。でも崩れたこと。焦って引っ張ったら中身が落ちたこと。ベトベトになったお菓子に、ごめんなさいも付け足した。
「じゃあ、その一つをくれ」
口を開けたディーが、手の中でベトベトになったお菓子を待っている。いいのかな、僕がいっぱい指突っ込んじゃったのに。迷いながら、もう少し小さいのを口に入れた。もぐもぐと噛んでから、僕にまたお菓子をくれと口を開ける。
「次は私の番です」
アガリも同じように「あーん」をしていた。どうしよう。お菓子の小さいのを、両手に持って片方ずつ入れた。手の指も舐められちゃう。擽ったくて笑う僕に、二人は美味しいと言った。
「次はルンの番だ」
またお菓子をもらう。次は僕があげる。繰り返していっぱい食べた。夜のご飯まで、外のお庭を散歩する。お腹が空かないと、残しちゃう。ご飯は誰かの命だから、大切に頂きなさい。そう教えてもらったから、ちゃんとお腹を空かせて美味しく食べるんだ。
途中で見つけた小さなお花を摘んで、部屋でアガリと一緒に紙に挟んだ。魔法で水を消して、ぺたんこにする。すぐにできたお花のぺたんこは、綺麗な色をしていた。花の赤がそのまま残っている。
「綺麗」
「ええ。せっかくなのでリボンをつけましょうか」
ピンクのリボンを付けて、壁に飾るんだ。作業が終わった頃、ディーが来て褒められた。ディーはお仕事していたみたいだけど、何のお仕事なんだろう。今度聞いてみようっと。
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