11.カーテンと絨毯とお掃除

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11.カーテンと絨毯とお掃除

 ぱちりと目が覚めて、体を起こす。眩しいのはなくて、まだ部屋は暗かった。大きな窓の外は明るいのに、お部屋の中は暗い。洞穴のお家とは違うみたい。きょろきょろしながら、隣で寝ているディーを見つめた。そうだった、昨日からディーのお家にいるんだっけ。  僕は知らないお洋服を着ていて、触った感じが気持ちいい。すぽんと上から被る服だけど、腰で紐が縛ってあった。布は綺麗なお空の色で、オレンジ色だよ。これは夜になる前のお空の色なの。青かった色がぱっと変わる。あの色に似ていた。僕の好きな色だ。 「ん? 起きたか」 「うん……どうしてお部屋の中は暗いの?」  早いな、とか。ぶつぶつ言いながら、ディーは真っ赤な髪をぐしゃぐしゃとかき回した。余計に絡まっちゃうのに。首を傾げた僕を抱き上げ、窓に近づく。布もかかってないのに、どうして中に光が入らないんだろう。不思議に思って手を伸ばすと、突然明るくなった。 「うわっ」 「……ははは、魔力で作ったカーテンだ」  カーテンは聞いたことある。洞穴の横穴から入ってくる光を防ぐのに、お母さんが使っていた布の名前だ。見えないけど、魔力で作ったから? どうして僕が触ったら消えたんだろう。不思議に思って、次々と尋ねる。  ディーは一つずつ答えてくれた。魔力で光を遮っているが、特別な道具は要らないこと。触れたら消えるのは、僕も魔力を持っているから。魔力を持った人が触るのが開けたり閉めたりする条件みたい。また手を振ってみた。暗くなるかと思ったけど、ならないね。 「可愛いことしてないで、着替えるぞ」  見えないカーテンを作る魔法は、僕には早かったのかな。諦めて、着替えに向かった。両手を上に挙げると、紐を解いた服がすぽんと脱げる。そのままシャツを被った。上からボタンを二つ外して、えいって被るんだ。ボタンがずれないんだよ。  僕が胸を張って教えると、すぐにディーがやってくれた。それからたくさん褒めてもらう。嬉しいな。この方法、お父さんに教えてもらったんだけど、お母さんの前でやったら怒られたんだよね。お父さんがしょんぼりしてた。  シャツが終われば、今度はパンツを履いて、半ズボンに足を通す。倒れないように、ディーに掴まって着替える。最後に靴を出された。僕はまず靴の裏を確認する。 「どうした」 「靴がばっちいとね、絨毯が黒くなっちゃうの」  僕のお母さんはお掃除が嫌いで、面倒臭がって魔法で吹き飛ばしてた。ゴミも全部消しちゃうんだけど、絨毯の汚れは難しかったみたい。汚さないように、絨毯の上は靴を脱いでたの。でも汚れるから、お父さんが洗ってたんだけどね。  両手を広げて、右や左へ動かしながら話す。うんうんと聞いてくれるディーは、なんでかな。ちょっと悲しそうだった。僕がお父さんやお母さんの話ばっかりするから、寂しいのかも。 「僕、ディーも好きだよ」 「ああ、ありがとう。俺もルンを大好きだ」  寝室の絨毯の上だけ、今日から靴を脱ぐことになった。靴下でぺたぺたと移動し、隣のお部屋に繋がる扉を開けてから靴を履く。 「たいへん! ここも絨毯……」  昨日気づかなかったけど、このお部屋も絨毯だ。僕の後ろで、ディーは大笑いした。
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