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17.木の枝にお家が建ってる
ディーがいろいろ話す横で、僕はずっと待っていた。他の人が話しているのに、邪魔したらいけないんだ。お父さんとお母さんが話している時、どうしてもと割り込んだら叱られたの。
ちゃんと覚えている。だから待ってから、僕の挨拶が届いたか確認するんだよ。でも、先にディーが聞いてくれたみたい。僕を抱っこして、にっこりと笑った。向かいで綺麗な緑の髪の人も笑う。その手が伸びて、僕の頭を撫でた。
「ごめんね。君の挨拶に合わせるべきだった。私は森を守る気高き一族のシャムシエルだ」
「しゃ……える?」
お名前はどこからどこまでだろう。最初のごめんねと最後しか聞き取れなかった。僕の使う言葉に合わせて話したのだと、ディーが話す。普段は使わない言葉を、頑張ってるの?
「ありがとう。僕はルンだよ」
お礼が伝わるように、大きな声でもう一度挨拶した。
「ルン」
「うん! えっと……しゃ?」
「難しいならシエルでいい」
後ろの部分だけでいいの? みんな、僕に優しい。嬉しくなって抱きついた。僕の腰を支えるディーが「おっと」と前に出た。飛びついた僕を掴もうとシエルも前に……そうしたら、二人のおでこで変な音がした。
「いたっ」
「いてぇ」
同時におでこを押さえて声を出す。ぶつかったんだ。ごめんなさいするところだけど、おかしくて。くすくすと笑っちゃった。
「こら、ルンのせいだぞ」
「罰だ」
ディーが僕をしっかり捕まえて、シエルが両手でくしゅくしゅとお腹を擽る。大笑いして、もうダメって叫んで、体を捩って、それでも終わらない。許してもらった時には、もう疲れちゃった。
息がはあはあして、ちょっとだけ涙が出る。それを袖で隠した。僕、泣いてなんかないからね。負けてないもん。
「では、我ら自慢の家にご招待しよう」
お家においでと誘うシエルがパンと手を叩いた。音に反応したのか、木の枝にいっぱいの人が現れる。全員、シエルと同じ色だ。肌は茶色で、髪は葉っぱの緑、目はきらきらの金色、ひょろりと細いところも似ていた。
ディーはふわりと浮き上がる。僕は抱っこで行くけど、シエルは違った。さっきの蔓を掴むと、するする登る。降りてきた時より速いかも。僕達は途中で追い抜かれた。
「ディー、もっと早く!」
「ん? ああ、抜かれたか」
負けず嫌いだなと笑うディーが、どんどん早くなる。ほとんど同じくらいで到着した。でも、ほんのちょっとだけディーの方が速かったと思う。
お家は木の枝にくっついていた。下から見えなかったけど、上は梯子や蔦で繋がって、家は太い枝の一部になっていた。慣れた様子で移動する人達と一緒に、ディーも梯子を登る。下を覗いたら、地面が遠かった。
「ディー、落ちたら痛い?」
「落ちないから痛くないぞ」
うん? 落ちないと痛くないけど、落ちたら痛いんだよね。答えがよくわからなくなって首を傾げる。その間に、ディーは上の枝にある大きな家に入った。
中は床もあって普通のお家みたい。地面が見えないと怖くなかった。シエルは靴を履いていなくて、代わりに布を巻いている。真似して僕は靴を脱いだ。お家を汚さないためかも? ディーは肩をすくめて、靴を脱いだ。
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