21.お嫁さんと約束したよ

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21.お嫁さんと約束したよ

 シエルのお嫁さんも一緒に、四人でお昼のご飯を食べた。お嫁さんが呼んでくれたの。お嫁さんはお腹が大きいから、あまり動けなくて。シエルが食べ物をいくつも口のそばに運ぶ。  口を開けてディーに食べさせてもらう僕と同じだ。あーんで食べるご飯は美味しいんだよ。お嫁さんはそうねと笑った。もう少しで赤ちゃんが生まれるから、そうしたら遊びにおいでと誘われる。ディーを見上げると、頷いた。 「そのときは俺が連れてくる」 「うん! 僕、赤ちゃんに会いにくるね」  約束して、ご飯の後で別れた。お洋服と毛布を包んで、下へ運ぶ。シエルが蔓を結んで、枝の上から放り投げた。慌てて覗いたら、今度はディーが慌てて僕を掴む。荷物は地面にぶつかる前に止まった。  蔓は地面までより短くて、ぶら下がっているの。僕はディーの抱っこで降り、シエルは木を滑ってきた。お嫁さんは上で手を振る。僕もいっぱい両手で振り返したんだ。  ドラゴンになったディーの背中に、シエルが荷物を積む。それから椅子を置いて、僕を乗せた。またねと手を振った僕と、ディーが浮き上がる。大きな木の周りを何回も飛んで、ディーは高い空へ上った。  あんなに大きかった木が、小さく見える。ふわふわした雲を越えて、ディーはお日様の方角へ飛んだ。いっぱい飛んで疲れた頃、少し斜めになる。 「降りるぞ」 「わかった」  魔法で落ちないから、安心して椅子に掴まる。斜めになるから掴んでる方が楽なの。雲を突き抜けて、森がどんどん近づく。大きな湖の上を過ぎて、山をまわり込んだ。見覚えのあるお家と、近づくドラゴンが目に入った。 「あれ! アガリだ」 「よくわかったな」  だって、魔力の色も匂いもアガリだもん。ディーは赤い鱗だけど、アガリはオレンジ色なの。二人ともキラキラしている。他にも青い鱗のドラゴンが飛んでいた。  ドラゴンって、いっぱい色があるみたい。緑とか黄色もあるのかな。黒いのもかっこいいと思う。お父さんは銀色だったよ。  ぶつかる勢いで近づいたアガリは、手前でくるりと回った。僕の隣を飛ぶオレンジの竜から、おかえりと声が聞こえる。嬉しくなって、両手を離して振った。出かける時に使った広いお庭に降りる。木とか噴水とかない広場なの。  お庭も周囲も濡れていた。屋根の上も濡れているから、雨が降ったのかな。それに木が何本か倒れていた。茶色いドラゴンが、折れた木を片付けている。 「嵐だったのか」  荷物を魔力で下ろすディーは、僕も一緒に浮かせながら首を傾げる。まだ大きいドラゴン姿のままだ。魔法を使うときは、ドラゴンの方が楽なんだって。  僕は椅子ごと降りて、よいしょと地面に立った。すぐにアガリが抱き上げる。ぎゅっと首に手を回して、ただいまの挨拶をした。ほっぺにチューもするよ。羨ましいと騒ぐディーにも、身を乗り出してチューした。でもアガリは僕を離さなくて、ずっと腕に抱いている。 「昨夜の嵐はさすがに酷かったので、連絡して正解でした」  アガリから嵐の連絡があったから、帰りを一日遅くした。その話を思い出す。もし無理していたら、嵐で僕達はびしょ濡れだったかも。ありがとうのチューも、アガリのほっぺに追加した。
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