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28.お家にいるけど会えないの?
ご飯は、僕を飲み込んじゃいそうなお魚だった。大きくて、中が白くて、ふわふわ。酸っぱい汁が掛かってて、でも食べていると美味しく感じた。
食堂で食べたから、椅子が大きい。ディーのお膝に乗って、お口を開ける。アガリもディーも、僕の口に運んでくれた。自分で食べるより美味しいかも。周りのドラゴンの人は、手を振ってくれたり目が合うと笑ったりする。嬉しくて、いっぱい手を振った。
ご飯の後で一緒にお風呂へ向かい、お湯に浸かる。広いお風呂は、皆で使うんだって。順番だから、この後は食堂にいた人達が入る。
「お湯はいつもあるの?」
僕のお家はもっと小さいお風呂で、お父さんと僕か、お母さんと僕が入ってた。全員は無理だったの。それで夜にお風呂のお湯は捨てて、次の日はまた入れていたよ。そのお話をしたら、ディーが変なことを言った。
「風呂は見れなかったな」
「僕のお家に行ったの?」
あーとか、うーとか。変な声を出した後で、ディーは大事な話だと言い出した。頷いて続きを待つ。
「実はな、さっきの仕事はルンの家を見てきたんだ」
「お父さんとお母さん、まだ帰ってきてない?」
帰ってきたら、僕のお迎えに来ると思う。でも留守番がいないから、ディーに見てきてと頼んだのかも。
お湯が熱いからと、お風呂の縁に座った。アガリも隣に座る。ディーは僕の頭を撫でて、ゆっくり話を始める。
「実は……ルンの両親は生きていたんだ」
「うん」
お出かけしてるって言ったのはディーなのに、変なの。きょとんとして頷く。そこでディーは封印という言葉を使った。
「封印されていて、しばらく会えない」
「うん」
遠くへ行ったんじゃなくて、お家にいるけど会えないの? 僕が出かけたらいいんじゃないかな。シエルのお家に行った時みたいに、ディーの背中に乗せてもらったらすぐだよね。
にこにこしながら聞いていたら、少しぼーっとしてきた。こないだと一緒で、お風呂入りすぎたのかな。ぐらぐらする僕に気づいたアガリが、抱っこして外へ運ぶ。ディーもタオルを持って追いかけてきた。
お部屋の長椅子に横になって、ディーのお話をもう一度詳しく聞いた。お母さんとお父さんはいつ起きるかわからない。それでも会いに行くか? と聞かれた。
お話できないし、抱っこもしてくれない。でも姿は見られる。だから頷いた。僕は二人に会いたい。
冷たいお水をもらって飲んで、僕はゆっくり息を吐いた。大変なことに気づいちゃった。僕のお父さんとお母さんが旅行の間、ディーのお家に住む約束だった。でも帰ってきてお家にいるなら、僕は動かないお父さんとお母さんのところで暮らすの?
ご飯、自分で獲れるかな。捕まえたら、煮たり焼いたりするんだよね。やったことない。それに一人で寝られないし、夜中におトイレも一人だと怖い。
ちらっとディーを見て、今度はアガリを見る。どうしよう、僕……まだ一人のお家は無理かも。このお家で暮らしたいけど、ダメって言われたら困る。僕を見る二人は、体を冷やしてお水を渡した。
なんてお話ししたらいいんだろう。困った僕は、ちょっとだけ唇を尖らせた。
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