30.不思議な色の宝物

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30.不思議な色の宝物

 お母さんのお客さんも、難しい言い方するんだよ。僕には優しく話してくれるけど、普段からそうしたらいいのにね。  僕がいいよと答えたら、バラムは嬉しそう。青いお空の目で、見たことない色の髪だ。手を伸ばして、触れる前に手を引っ込めた。前にお父さんが言ってた。知らない人に勝手に触ったらいけないの。 「バラム、触っていい?」 「ええ、手ですか?」 「髪の毛」  驚いた顔をしたあと、いいですよと頭を低くした。優しい人だ。ありがとうを言って、そっと撫でた。さらさらした髪だね。色はやっぱり不思議な色だった。白っぽいんだけど、光でキラキラする。 「気に入ったのか?」 「この色、何色?」  ディーに尋ねた。何を聞いても知ってるから、教えてくれると思う。ディーはバラムの髪を見て、少し考えた。 「一番近いのは真珠の色だな。虹色に光を放つ乳白色の宝石だ」 「しんじゅ」  いろんな色の宝石? 宝石って、お母さんがお父さんからもらった光る石だ。僕も欲しかったのに、大人になったらね、と言われちゃった。その話をしたら、可哀想にと頭を撫でるディー。 「私が持っている真珠をあげましょう」 「くれるの?」 「ええ。穴が空いているので糸を通して、首に下げておけますよ。無くさなくて安心です」  嬉しいな。話している間に、バラムがご飯を運んでいた。大きい卵の皮が掛かったパラパラの何か。お米なんだって。初めて食べる。赤いソースがかかった卵と一緒に、お米も口に入れた。  お米には赤い色が付いていて、すごく美味しい! あーんと口を開けるたびに、ディーとアガリ、今日はバラムもスプーンを出す。順番に食べて、お腹が膨らむくらい詰めた。 「真珠を見に行きましょう」  アガリの抱っこでお部屋に戻る。ディーはこの後お仕事があって、ここでバイバイだった。終わったらすぐに行く、と言い残して連れて行かれた。見送った僕は、バラムに気づく。 「バラムはお仕事ないの?」 「今日はルン様と遊ぶのがお仕事です」 「ほんと? じゃあ、僕とお散歩して、戦う練習もして」  戦う練習は、棒でえいって相手をやっつける。アガリやディーは「まだ早い」と言うけど、こないだは本当に怖かったんだ。人間に捕まって、銀の棒で叩かれた。まだ背中の羽が治ってないの。  今度は叩かれる前に、叩くと決めた。バラムはお手伝いしますと笑う。僕の戦う練習を手伝ってくれる。抱っこするアガリの肩越しに、手を伸ばした。握手みたいに握るバラムは、嬉しそう。  アガリが立ち寄ったのは、ディーのお部屋じゃなかった。手前を曲がって、二つ目の扉を開ける。ここがアガリのお部屋なのかな? 全体に白や緑が多くて、色がたくさんのディーの部屋と違った。  バラムは手を繋いだままだから、僕に引っ張られて入る。僕をクッションの上に下ろして、箱を取りに行った。戻ってきて、中を見せてくれる。 「うわぁ、綺麗」  いろんな色の丸い球が入ってる。白っぽいのに虹色が入るのもあれば、黒くて緑や青に光るやつも。アガリは中から一つ選ぶと、僕の手に乗せてくれた。 「これを首飾りにしましょうね」 「ありがとう、アガリ。僕大切にするね。ほら、バラムの色だよ」  バラムは同じだと頷く。宝物が増えた。お母さんに自慢しよう!
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