32.初めてのハンモック

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32.初めてのハンモック

 バラムと長い棒を持って並ぶ。叩くためには、持ち方が大事なんだ。教えてもらった通り、きちんと握って上に持ち上げた。重くてふらふらしたけど、もう平気だよ。振り下ろして、また持ち上げた。  後ろにいるアガリは何をしてるんだろう。振り返ると「上手です」と褒めてくれる。隣のバラムも頷くから、僕はちゃんと出来てる。持ち上げる時は重い棒だけど、上に行くと軽くなるの。それで下ろす時はまた重い。  繰り返しながら、汗が出るまで練習した。三人でお風呂に入って、冷たいお水を飲む。それからご飯も食べた。ディーがいないから、アガリのお膝に座る。バラムが嬉しそうにパンを差し出した。  ちょっと遠いの。身を乗り出して、ぱくりと齧る。 「次は口元へ運びます」  うん、その方が食べやすいよ。にっこり笑って、また口を開ける。今度はアガリがくれた。これは果物だ。甘いのを食べて、バラムのパンも齧る。パンにジャムが塗ってあるから、こっちも甘い。  お腹いっぱい食べて、お昼寝をした。バラムは外で待つと言ったけど、一緒に寝てもらう。僕が寝ている間、外に立っているのは寂しいと思うんだ。アガリとバラムに挟まれて、お庭にあるお部屋で寝た。  不思議なんだよ。お部屋で屋根があるのに、壁がないの。窓もなくて、全部開いている。お庭用のお部屋で、晴れてる日しか使わないと聞いた。雨が降ると横から入ってきちゃうのかな。  お日様の光がキラキラして、お庭の葉っぱの音がする。風が吹いて涼しいし、気持ちよかった。ぐっすり眠った僕は、柱についている変な金具に気づく。 「これなぁに?」 「ハンモック用の金具ですね」  やっぱりアガリは物知りだ。僕にたくさん教えてくれる。ハンモックの話を始めたら、バラムが建物の方へ戻っちゃった。すぐに網を持って帰ってくる。 「こちらがハンモックです」  バラムは取りに行ってくれたの? 笑顔で抱きついて、お礼を言った。なぜかアガリが変な顔をする。バラムの後に、アガリにもありがとうの抱っこをした。もしかして、自分だけないと思ったのかも。そんなことないよ。  ハンモックの網を金具に掛けると、僕はアガリの抱っこで上に乗った。足が抜けちゃうと心配したけど、網はそんなに大きくない。落ちそうで怖いし、すごく揺れた。座ったまま泣きそうになっていると、横になるよう倒される。  びっくりした。横になると、あまり揺れが気にならないの。それに上を見るから、網の下も見えないんだ。全然怖くなくなったよ。風が吹くと、背中も涼しいから暑い日にいいな。さっきお昼寝終わったのに、また眠くなっちゃう。  アガリが網を揺らして、バラムが低い声で歌った。初めて聴く音楽で、でも優しい感じだ。僕は好きだな、この歌。耳を澄ましていたら、また眠っちゃったみたい。たくさんお昼寝しすぎて、ぼぉっとする。 「これは夜、寝ないかもしれません」  やれやれと首を横に振るけど、アガリは怒ってない。バラムも平気。だったらいいや。僕は歩いてお部屋に戻った。ハンモックは片付けるので、バラムが担ぐ。アガリは抱っこしようとしたけど、僕だって歩けるよ。でも手は繋いでね。
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