33.お父さんとお母さんは狡い

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33.お父さんとお母さんは狡い

 皆が心配してたけど、僕は夜に帰ってきたディーとぐっすり眠った。お風呂でぽかぽかして、美味しいお水を飲んで、横になったら、すぐ眠くなったよ。ディーに背中をトントンされると寝ちゃう。  真珠はちゃんとディーに報告して、お風呂に入れちゃダメも伝えた。今度はアガリがお仕事で留守にする。バラムは、ディーがいない時の護衛なんだって。今日はもうお仕事終わりで帰った。次の日はバラム、お休みなの。 「よし、今日はルンの洞窟の家に行くぞ」 「うん!」  動かないけど、お父さんとお母さんに会える。どんな状態なんだろう。触れるのかな。わくわくしながらご飯を食べて、お昼のご飯を入れた籠とお部屋に帰った。昨日のお昼寝のお庭じゃなくて、隣のドラゴンが飛ぶお庭へ向かう。 「籠は俺が持って行くから、ここだ。そう、ルンは気をつけて登れ」 「わかった」  ドラゴンの人が手伝ってくれた。椅子をディーの背中に乗せて、僕も座る。魔法で固定してもらい、籠をディーが片手に引っ掛けた。最初からドラゴン用に作ってあって、爪に引っかかるんだ。ふわりと飛び立つディーの背中から、さっきのお兄さんに手を振った。  あっという間に高いところまで浮かんで、お家のある山へ飛ぶ。お家のある方は少し寒くて、ディーのお家は暖かいところにある。山も全然違う形だった。下を見ると、緑だったり青かったり、光ったりしている場所もある。光ってるのは、お水だって教えてもらった。  時々ディーと話しながら、空の旅を楽しむ。お父さんとお母さん、今頃何してるのかな。ディーは僕が来るって伝えてくれた? 知らなかったら、驚かせちゃおう。  降りるぞ、と声が掛かって椅子にしがみつく。下へ向かうディーの速度が落ちて、僕達は安全に地面に降りた。魔法で椅子を下ろしてもらい、籠を置いたディーはいつもの姿になる。  やっぱりキラキラして綺麗だ。腕が太くて、抱っこされても安心。顔に傷はあるけど、優しい。大好きなディーと一緒に、お母さん達にただいまして。いろいろ考える僕を連れて、ディーは洞穴に入った。  扉を開けるとお客さんのお部屋、通り抜けるとご飯食べたり遊んだりするお部屋。その奥の扉は開けっぱなしだった。寝るお部屋があるはずなのに、透明の何かが入ってる。 「あれ、何?」  ディーの手を引っ張って近づいたら、大きい水の塊に見えた。でもお水は平らになるから違う。縦になってるもん。ぺたりと触れたら冷たかった。  覗き込んだ奥に、お父さんとお母さんが手を繋いでる? あの真ん中に僕が入りたい。 「ディー、僕も入りたい」 「無理なんだ」  どうして無理なの? 説明するディーは苦しそうな顔で、僕の頭を撫でた。あの氷は、お母さんが溶かさないと出られない。いつ溶けるかわからないし、壊すのも出来ない。 「……お父さんとお母さん、二人で狡い」  僕も一緒が良かった。ぷくっと頬を膨らませると、横からディーが太い指でぷすっと空気を抜いた。 「二人も本当はルンと一緒にいたい。まだ溶かせないから、俺達と暮らして会いにこよう。その時に大きく強くなったルンを見せてやろうな」 「……がんばる」  大きく、強くなる。ディーやアガリみたいになれたらいいな。そう思いながら、僕は約束した。
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