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35.バラムと仲良くなった
ディーが大きい印を押して、僕は隣に小さいのを押す。ディーが手にしているのは四角くて、僕が持っているのは丸かった。最初に見た書類を真似て、右の下の角にぺたんと押す。ぎゅっとして、そおっと外すと丸い跡がついていた。
「できた」
「うん、見事だ。ありがとう」
ディーが褒めてくれたので、次の書類も頑張る。両手くらいの枚数が終わったところで、お茶の時間になった。お菓子を運んできたアガリは、バラムに何かを囁いた。すると彼も椅子に座る。
そっか、ずっと立っていたら疲れちゃう。僕も気付けるようにならなきゃ。うんうんと頷きながら、お菓子をどうぞと差し出した。
「バラム、あーん」
「ちょ! いつの間にそんなに親しくなった? いや、親しくていいが……俺が先だろう」
よくわからないけど、低い声でディーがバラムを睨む。でもバラムは口を開けていたから、先だよ。お菓子を入れた。僕を膝に乗せたディーが騒いだので、アガリが無言で僕を移動させた。今度はアガリのお膝だ。
「兄さん、大人げないのでペナルティーです」
ぺろるちぃ? 聞き取れなくて首をかしげる僕に、アガリがお菓子を運んでくれた。口を開けて食べる。その間もディーは何か言ってたけど、アガリは無視した。喧嘩は良くないと思う。
「仕方ない。ルン、あーん」
ディーが差し出したお菓子も齧る。こっちは蜂蜜の匂いがした。さっきのお菓子はジャムだったよ。バラムは細長い焼き菓子で、チーズの匂いがする。たくさんの種類があるお菓子を楽しんで、まだ仕事をするディーを置いてお部屋に戻る。
ディーとアガリのお部屋は、二人がいない時は入らないの。だから別のお部屋がある。お昼寝して、遊ぶ道具や絵本を使うお部屋だ。僕の頭の上までしかない棚は、絵本がいっぱい。絵が見えるように飾られていた。
こないだ貰った絵本を広げて、絵を眺めた。僕はまだ読めない言葉があって、そこを飛ばして読んでみる。指でたどって読む僕の隣に、バラムが座った。絨毯の上なのにいいのかな?
僕が使うお部屋は、ふかふかの絨毯だ。入り口で靴を脱ぐから、あまり汚れないと思う。バラムも靴を脱いで入って、僕の隣で絵本を覗いた。バラムも読みたかったのかな。
「バラムも読む?」
「ルン様がよろしければ、私が読みましょうか」
「いいの?」
やった! 読んでもらうことにしたので、バラムのお膝に座る。そうしたらバラムから変な声が出た。甲高くて、ひゃって感じの声だ。痛いところに座ったのかも。ごめんねして、座る位置をズレた。今度は声が出なかった。
「えっと……」
「いつもね、ディーが読んでくれる時にこの姿勢なの。アガリは横の抱っこだよ」
「……羨ましい」
うらまやち? 大人は難しい言葉をいっぱい使う。ぼそぼそ話すと聞こえないよ。いずれは僕も覚えて使うのかな。うふふと笑って、バラムが読んでくれるのを待つ。
「では……」
お話は強い竜王の物語、竜族の最初の王様だよ。赤くて強くて優しくて、たくさんのドラゴンを幸せにした。ディーに似てるといいな。
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予約セットし忘れました(o´-ω-)o)ペコッ ごめんなさい
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