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42.シエルのお嫁さんと赤ちゃん
すっごく頑張った。いつも寝る時間より遅くまで、起きていたと思うの。なのに、目が覚めた。
ここはシエルのお家だ。木のお家の屋根を見上げて、僕はがっかりした。シエルに会いに来たから、ここにいるのはいいの。でも起きていたかったのに。
「起きたか、ルン」
「うん、おはよう」
シエルに抱っこされて、お布団の上に座った。シエル達はベッドじゃなくて、ふかふかのお布団を床に敷いて眠る。昼間は畳んで片付けるんだ。僕の隣でディーが寝ていた。
「ディーは疲れてるの?」
「明け方まで飛んでいたからな。寝かせておこう」
「うん」
お部屋が一つの木のお家を見回し、お嫁さんがいないと気づく。ご飯食べに下へ行ったのかな。シエルはひょいっと僕を脇に抱えて、木を飛び降りた。お腹の奥が、ぶわっとする。肌がぞわぞわして、すぐに着地した。びっくり。
枝の上に降りたシエルは、僕を左腕で掴んで、右手は蔓を持っていた。片手でも平気なんだね。
「僕、歩けるよ」
「落ちたら大変だから、もう少し待ってくれ」
ディーに叱られるとシエルは笑う。そっか、こないだも噴水に落ちたし、大人しくしておこう。また心配させるのは嫌だった。前に訪ねた赤ちゃんがいる人達のお家に入る。僕はお家に足を付けた。シエルと手を繋いで、カーテンのお部屋を覗く。
「あ! お嫁さんだ」
「ルンちゃん、ようこそ」
おいでと手招きされて、ゆっくり歩いて近づく。急ぎたいけど、転んでお嫁さんや赤ちゃんにぶつかると困るよ。お嫁さんは赤ちゃんを抱っこしているみたい。小さな包みを抱いていた。
「赤ちゃん、寝てる?」
「まだ起きているわ、ほら」
床のお布団にいるお嫁さんが、包みの中を見せてくれた。シエルと同じ茶色の肌の子だ。綺麗な金色の目だけど、髪の毛が少ない。ちょろちょろと生えてるだけ。緑の髪がふさふさしないのかな。
「……髪の毛は?」
「ふふっ、そうよね。これから生えてくるのよ」
まだ増えている途中だった。赤ちゃんの時は、あまり髪の毛がないんだって。僕も同じだったのかな。そう聞いたら、多分ねと笑った。お母さんが起きたら聞いてみよう。
赤ちゃんは起きているけど、泣いたりしない。じっと僕を見ていた。僕も見つめ返す。大きな目だな。
「うぁう」
声を上げて、お嫁さんの方を向いちゃった。お乳の時間だと言われ、同じ高さの枝にある食堂へ移動する。先にご飯を食べちゃうみたい。ディーが持ってきたお土産に入っていたハムを挟んで、パンを食べた。
木の実に穴を開けたジュースを飲んで、食堂に集まってる人とお話しする。木で暮らすシエルの仲間は、皆おなじ色だった。茶色い肌と緑の髪、金色の目。遠くから見ると、家族とお友達を間違えちゃいそう。
心配を僕が口にしたら、皆は顔を見合わせた。それはないみたい。僕なら間違えちゃうと思うから、すごいな。シエルの説明では、木に暮らす一族は遠くまでよく見える目を持っているとか。ドラゴンも目がいいと聞いて、僕だけ違うのかも……と心配になった。
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