52.今度はふかふかの猫ちゃん

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52.今度はふかふかの猫ちゃん

 焼いたお魚を三人で食べる。お魚を捕まえるのは亀さん、焼くのはアガリ、僕は焦げないよう見張るお仕事だよ。分担と呼ぶんだって、教えてもらった。  夜になったら、また亀さんのお家に泊まる。明日の朝、別の場所に移動すると聞いた。帰るんじゃなくて、移動。明日のお出かけも楽しみだけど、亀さんは一緒に行けない。それは残念だった。  お友達になった人、皆が一緒に暮らしたら楽しいのにね。アガリが豆のいっぱい入ったスープを作る。僕は器を拭いて並べた。亀さんは生のお魚を食べるから、スープを食べない。僕とアガリの分を用意して、パンと一緒に食べた。  あーんで口に入れるパンは柔らかくて、スープも美味しい。よく見たら、小さなお肉と野菜が入っていた。乾燥させて旅に持っていくご飯の材料。材料の言葉も今日覚えた。  お家にいるより、お外へ出かけた方が、たくさん新しい言葉を覚える気がする。知らない人とも会える。僕はお出かけが大好きになったよ。そう伝えたら、アガリは喜んだ。僕を抱っこして眠るけど、上には亀さんのお腹がある。  もう怖くない。暗くても亀さんがいるから。ここは安全な洞窟だった。水が落ちる音が聞こえるお家も、僕は好きだよ。  目を閉じたらすぐに朝になって、亀さんと別れるのが寂しい。小さくなった亀さんの頭を撫でて、ほっぺをくっ付けた。僕のために小さくなってくれたの、嬉しい。いっぱい大好きを伝えて、また来るねと笑った。  亀さんは洞窟の外まで見送りに来てくれて、アガリの抱っこで飛ぶ僕は見えなくなるまで手を振る。お家があったのは、この川が流れていく方角だ。今は反対方向へ進んでいた。  川のもっと上の方だよ。森の上から川が見えなくなり、少ししたらぽっかり穴が空いていた。森の木がないの。不思議な場所にアガリは降りる。 「ここに来たかったの?」 「ええ、目的地です」  広くて平らな地面は、草もあまり生えていなかった。ディーのお家の着地するお庭みたい。誰かが降りてくるのかも。  上を見上げるけど、誰もいなかった。お日様は今日は休みで、雲がいっぱい。目を森へ向けた。何かいる? 「おや、アガリアレプトかい」  大きな大きな猫ちゃんだ。ドラゴンになったディーくらいある。灰色と黒の縞々だった。背中に羽がある。 「アガリ、この猫ちゃんは飛べるの?」 「猫ちゃん? いつの間に子供なんぞこしらえて」 「失礼。私の子ではありませんよ」 「それなら、ディアボロスの?」 「魔王陛下と先代様のお子です」  頭の上の会話がよくわからない。僕のお話かな。きょろきょろする僕に、猫ちゃんは近づいた。羽は真っ白なんだね。 「こんにちは!」  元気に挨拶したら、猫ちゃんの尻尾が揺れた。ふかふかの毛が柔らかそう。触りたくなって、僕はお願いすることにした。いきなり触ったらダメなんだよ。 「僕はルンだよ」  まずご挨拶。それから猫ちゃんに手を伸ばした。まだ届かないけど。 「触らせて」 「いいよ」  猫ちゃんは僕の匂いを嗅いで、ぺろりと舐めた。お顔のほっぺの毛に触れる。ふかふかで気持ちよかった。顔をぼふって埋めたいけど、ダメだよね。仲良くなったら、またお願いしてみよう。
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