65.森の奥へ果物を採りに

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65.森の奥へ果物を採りに

 フィルとお風呂を出て、抱っこされて眠った。今夜はフィルと一緒だよ。僕を腕でぎゅっとしたまま眠ったフィルは、温かくてお母さんみたいだった。  朝ご飯はフィルとディーで食べる。アガリはお仕事で、昨日の夜から出かけたの。バラムは騎士の訓練があるんだよ。皆が忙しくしているけど、今日は僕も忙しい。  フィルの護衛の騎士さんをするんだ。胸を張ってそう伝えたら、ディーは膝をついて僕の目を覗き込んだ。 「大切なお姫様だから、頼むぞ」 「うん」  ディーのお嫁さんになるお姫様を、騎士の僕が守る。ちゃんと出来る。フィルにもらった新しい玩具の剣を持って、反対の手はフィルと繋いだ。並んで歩きながらお家の裏側へ回る。そこから出かけるんだ。  お家の裏は森があった。森はたくさんの木が生えていて、道が作られている。この道を奥まで行くと、果物を植えた場所があるんだって。フィルとお話ししながら森の中に入る。ここはお日様の光が小さく届いて、きらきらしていた。 「きれぇ」  見上げながら小さく呟く。光が踊ってるみたいだ。フィルもそうねと笑い、一緒に奥へ進んだ。今日のフィルはスカートじゃなくて、ズボンだ。歩きやすいからで、後ろを守る騎士のお姉さんの服に似ている。  ひらひらした襟や袖がついているから、フィルの服はお姫様用なのかも。僕は紺色のズボンと白い靴下、靴は紺色だった。シャツは薄い水色なの。歩く先で、小さなお花を見つけた。可愛い白い花をフィルと眺めて、後ろの騎士のお姉さんにも見せた。  綺麗や素敵は、皆で一緒に楽しむ方がいいよね。いつの間にか僕の木の剣は騎士のお姉さんが持っていて、空いた手を繋いでいた。危なくなったら、すぐ返してもらわないと! 僕はフィルの騎士さんをするんだから。 「もちろん、すぐに返す」  騎士のお姉さんが約束してくれたので、安心して森の奥へ進んだ。草が生えている道は平らで、とても歩きやすい。少しすると、水の音がした。 「川?」 「いいえ。でもとても綺麗よ」  フィルは果物採りに前も来たみたい。楽しみにしながら足を進めた先、森の木がぱっとなくなった。猫さんのお家みたいだ。広い場所だけど、真ん中に水たまりがあった。 「水たまりだ!」 「これは池、ドラゴンが穴を掘って作ったのよ」  竜族の人がドラゴン姿で穴を開けて、そこに水が流れ込んだ場所だった。なんで穴を掘ったんだろう。すると、くすくす笑うフィルが教えてくれた。 「ディアボロスには内緒よ。訓練した成果を試したくて、私が穴を開けちゃったの」  大きい氷を作って、それを砕いて地面に叩きつけたら……この穴が出来たの? フィルはすごいんだね。氷が溶けて、流れ込んだ水が池の水たまりだった。  すぐ近くに赤い果物の木がある。黄色い長細い実が揺れているし、その先には白や紫の果物も見つけた。 「さあ、たくさん持って帰って、おやつを作りましょうね」  この果物からおやつを作る。たくさん作って、騎士の人や侍女の人にもあげたいな。
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