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キラキラ
「お母さん」
洗い物をする私の膝に息子が飛びついてきた
「来て」と手を引かれ連れてこられたのは廊下だった。駒を構える息子に私は緊張する。息子の手を離れた駒は廊下の上で勢いよく回り出した。
「凄い!」
息子はパッと顔を輝せしゃがむ私の額に手を伸ばしてきた。
「痛くない?」
打って変わって泣き出しそうな顔だ。私の額には大ぶりな絆創膏が貼ってある。先週、買ったばかりの駒を回せず癇癪を起こした息子が駒を投げつけ、それが私に当たったのだ。
「ごめんなさい」
息子の両目いっぱいに浮かぶ涙が窓からの光を受けキラキラ光った。
「大丈夫だよ」
つられて私も涙する。
息子が駒を回せた事。心からごめんなさいと言えた事。きっと一生忘れない。
⭐︎付記
こちらは、Twitterの300字小説の企画に参加したもの。お題が「きらきら」でした。
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