オムレツ

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オムレツ

「お母さん、邪魔」  わざと冷たく言うと背中に張り付いていた母はリビングの方へ行ったようだった。僕はそっちを見ないけど、母がじっと見ているのは分かっていた。  ここで甘い顔をすると全て取り上げられかねない。エプロンの紐を締め直し気合いを入れる。心配の気配を知らんぷりでフライパンの卵液を箸でかき回した。ジュワッと音があがり空気が動揺するのがわかる。  出来上がったのはオムレツというより卵焼きだった。それでも僕は「ホラできた」と胸を張る。母は涙ぐみ空気に溶けていなくなった。僕は仏壇を振り返る。 「もう大丈夫だからね」  明日起きたらまたリビングに浮いてるんだろうけど……。鼻を啜りながらオムレツを食べた。 ✳︎ こちらは、Twitterの「毎月300字小説企画」第二十回「回る」に参加したものです。何が回るんだろうと考えて、観覧車? ハムスターの回し車? ……うーん、なんも思いつかん……と結局卵をかき混ぜるお話にしました。
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