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「ん、んんー!」
伸びをして、ガジェットの方を見る。
さすが貧弱、体力が少ない。体の大きさと耐久力は比例しないのだろうか。
「ねー……起きてー……」
フラフラと彼の方に近付くと、彼の目元にキラリと光るものを見つけた。
「ん?」
よく見てみる。
これは────え!?泣いてるの!?
「わっ────むぐっ」
思わず声が出そうになり、自分で口を塞ぐ。
いくら相手が“あの”ガジェットでも、涙を笑うほど落ちぶれちゃいない。
それにこの状況を見て、理由が理解できるのだからなおさらだ。
やっぱり、この人は────。
「────はっ!?」
「うわ!?」
「に゛ゃっ!?」
急に目を覚ましたので、今度こそビックリして声が出た。ブラックはビョン!と跳ね、体をぶつけながらどこかに走り去っていった。
「小娘ッ!今何時だ!?」
「え?えっと……」
壁掛け時計を見る。18時すぎだ。
「夜」
「晩飯の準備がまだだ!まったく、どうして早く起こしてくれないんだ……!」
ブツブツ言いながら、その大きな体を動かしてのそのそと動く。
正直、この人は弱い。
全然強くないし、怖がりだし、宝の持ち腐れだ。
でも…………。
見捨てたら、どんな行動をするのかがなんとなくわかるのが怖い。
まさか『ブラック』を『あの人』と重ねるとは思わなかったけど、まぁ、確かに一緒なのかもしれない。
色も、行動も。純粋さも、距離も。
──悪魔って、難しい。
「ね、ねぇ!」
私はガジェットを呼び止めた。
彼は長い長い髪を揺らし、こちらを見る。それと同時に目を擦った。
「なんだ」
紫色の瞳と、胸元の紅い宝石が輝く。
「猫!……飼って、いい?」
ガジェットの────心臓を2つ持つ悪魔の目を見た。
本当は怖い。
ただでさえ『悪魔』だというのに、彼はさらに珍しい能力を思っている。何をされるかわからない。
それでも、自分のやりたいことはちゃんと言わなきゃ!!
「…………………………好きにしろ」
彼は少しだけ、笑ったような気がした。
猫を拾われた!
おしまい
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