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前編
よくあるワンシーンで王太子であるヴィレリオから婚約破棄をつきつけられたロッサナ・トスカーニは、田舎の祖父母が住まう屋敷へと向かうところであった。どうやらヴィレリオは真実の愛というものを見つけたらしい。だから、ロッサナとの婚約を解消し、その相手と結婚したいとのこと。
婚約破棄だけであれば、ロッサナも田舎へ向かう必要などなかった。だが、父親のトスカーニ侯爵が、その婚約破棄を知った途端、ものすごい勢いで怒り出して「お前なんかどっかへ行ってしまえ」とロッサナをポイっと捨てたのだ。
母親のトスカーニ侯爵夫人はそんな娘を不憫に思ったものの、父親に歯向かうことはできない。でも、可愛い娘。田舎の領地に引っ込んで悠々自適とした生活を送っている祖父母に連絡をしたところ、喜んでロッサナを引き取ってくれるとのことだった。
そんな流れから、売られていく子牛のような気分で、ロッサナは馬車に乗っていた。
みんなが綺麗ねと褒めてくれた金色の髪は、ゆるく一つの三つ編みにしていた。これから待っている暮らしは華やかな暮らしではない。逞しく生きてやる。
祖父が治めているフェレーリ領は田舎も田舎、超田舎だった。
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