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☆☆☆
そして時は過ぎ。
またタケノコのシーズンがやって来た。
その間、あの王太子は正式にダニエラと婚約したらしい。
それでも田舎に引っ込んだロッサナには関係のないこと。いや、おめでとうとだけ、心の中で呟いた。
そしてロッサナは正式にフェレーリ家の養子になっていた。正確には、母の兄の養子。
トスカーニは侯爵家、フェレーリは伯爵家でロッサナは降下したことになるけれど、あのトスカーニ家と縁が切れたことを考えると、母の兄夫婦には感謝しかない。
最近、エドアルドの姿が見えない。
そう口にしたところ、祖母が「エドアルドは実家に戻ったのよ」と言う。
どうやら彼は、この地の民ではなかったらしい。わざわざ農業を学ぶために、二年間ここにいたそうだ。
そう聞くと、少し寂しい気がするのはなぜだろう。
だがそんな感傷にひたっている場合ではない。とにかくタケノコを掘らなければ。
昨年、竹林を整備したせいか、今年のタケノコは掘りやすい。
また、お米の美味しさを知った領民は、白米を準備している。今年こそ、念願のタケノコご飯をみんなに広めるのだ。
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