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ロッサナの呟きに、祖父母は首を傾げる。聞いたことのない言葉のようだ。
「竹の子供のタケノコです」
そう、ロッサナは思い出したのだ。タケノコという存在を。
つまり前世の記憶、といわれる何かが、頭の中にふわっと浮かび上がった。
しかも今は卒業シーズンを終えた、穏やかな春。これから、ニョキニョキとタケノコが顔を出す時期でもある。
「おじいさま、おばあさま。裏の竹林ですが、管理を私に任せていただけませんか?」
それは祖父母にとっても願ってもない申し出であった。前述したように竹林は成長スピードも速く、繁殖力も強い。このまま放っておけば、地盤も緩むだけでなく、農地まで犯されその農作物をダメにしてしまう恐れがある。
「もしやってもらえるのなら、大変助かる。私たち二人とも、年をとってしまったから、なかなか身体が思うように動かなくてな」
顔に深く刻みこまれた皺を寄せながら、祖父はそう言った。
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