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昼間もほとんどの時間を竹林で過ごしているし、他の畑や田んぼへと足を運んでいるのもあり、最近は祖父母との会話の時間もなかなかとれていない。
談話室へと足を運ぶと、祖父母が並んで座っていた。怖い顔で皺を刻んでいるのではなく、にこにこと笑っている。
「ロッサナ、そこに座ってちょうだい」
向かいの席を促される。言われるがままに腰をおろす。
「あなたに求婚者が現れたのだけれど、結婚する気はある?」
祖母の手の中には一通の封書が握られている。
ロッサナは目を大きく見開いた。
「それはトスカーニ家に届いたものですか? それともフェレーリ家に届いたものですか?」
ロッサナがフェレーリ家の養子になったのはここ数か月の話だ。
「安心してちょうだい、トスカーニ家は関係ないわ」
「では、私がフェレーリ家の養子になったことを知ったモノ好きが現れたということですね」
「まあ、そうだな」
祖父は慌てて咳払いをする。
「悪い話ではないのだが」
「お相手は?」
そう、肝心のその相手が問題である。
「王弟殿下」
「はい?」
「つまり、ロレーヌ公爵」
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