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「え、まあ、そうだな」
「ロレーヌ公爵には悪いことをしてしまいました。王太子から婚約破棄され、侯爵家を追い出された私と結婚したいと言ってくださったのに」
「だったら、なぜ?」
「なぜ? なぜって、この竹林があるからです。私がこの土地を離れたら、誰がこの竹林の面倒を見るのですか? せっかくここまで整備したのに」
「つまり、竹林に負けた、と?」
「正確にはタケノコですね。タケノコはこの領地の最大の収入源です。今、タケノコを失ってはまたこの領地の財政状況が厳しくなりますから」
エドアルドは苦笑した。
「君にはタケノコ令嬢という二つ名を与えたいな……ふっ、ふふふふ、ははははは」
とうとう、我慢ができなくなったのか、大笑いする。
「そんなに笑うところですか?」
むっとしながらロッサナが問う。
「いや、タケノコに負けたのかと思うと、おかしくてだな」
「無駄口を叩きに来たのであれば、さっさとお帰り願えませんか? 先ほども言いましたが、私はこう見えても忙しいのです」
ロッサナは右手の袖で目に入ってきそうな汗をぬぐう。
「ああ、邪魔をして悪かった。でも、もう一つ君に頼みたいことがあったんだ」
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