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その後、祖父母はこの領地で農業を営む民を紹介してくれた。ここの民は定期的に集まって、作物の状態とか、今後の作物の植え付けの予定とか、そういうことを相談しているらしい。その場に、ロッサナも呼び出されたのだ。
「竹林の管理をすることになりました、ロッサナ・トスカーニです。よろしくお願いします」
そう言ってロッサナが頭を下げたところ、一人の黒髪の青年が「トスカーニ? ヴィレリオ王太子の?」と呟いた。
その青年は、エドアルドと名乗った。しかも王都で勉学に励んだ経歴もあるようで、だからトスカーニという名前に反応したのだろう。
「王太子から婚約破棄された、ロッサナ・トスカーニです」とロッサナが言い直したところ、一同から笑いが溢れた。皆、他人の不幸は大好きである。
さらに「なぜ急に年若い娘がこんな田舎に来たのか」ということを察したようだ。
「そうか、大変だったな」と肩を叩いてくれる者。
「これからいい出会いがあるわよ」と手を握ってくれる者。
「うちの息子はどうだい」と紹介してくれる者。
こんな温かい民に迎え入れてもらえ、ロッサナは目頭が熱くなった。
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