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「王弟殿下?」
その問いにも彼は首を縦に振った。
ロッサナの顔から血の気が引いた。今すぐこの馬車から飛び出したい。それを止めたのはやはりエドアルドだった。そのロッサナの膝の上に置かれた手をそっと握る。
「逃げるなよ。俺に恥をかかせる気か?」
そういたずらっぽく言う彼に、ロッサナは観念した。
「意地悪です」
ロッサナは言う。
「どうして黙っていたんですか?」
「聞かれなかったから、知っていたのかと」
「知らなかったから、聞かなかったんです」
それから今までのやり取りを思い出し、恥ずかしくなってくる。本人を目の前にしてタケノコの方が大事とか、そんなことを言っていたのだ。
「ロッサナ。手紙ではなく、きちんと俺の言葉で伝えたい」
エドアルドの瑠璃色の瞳は、真っすぐにロッサナを見ている。
ゴクリと喉を鳴らして、ロッサナは頷いた。
「俺と、結婚して欲しい」
だが、その言葉には頷けなかった。
「少し、考えさせてください」
「そんなにタケノコが大事か? まあ、聞かなくてもわかっているが」
「聞かなくてもわかっているなら、聞かないでください。私にとってタケノコは大事です」
「俺は?」
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