後編

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「王弟殿下?」  その問いにも彼は首を縦に振った。  ロッサナの顔から血の気が引いた。今すぐこの馬車から飛び出したい。それを止めたのはやはりエドアルドだった。そのロッサナの膝の上に置かれた手をそっと握る。 「逃げるなよ。俺に恥をかかせる気か?」  そういたずらっぽく言う彼に、ロッサナは観念した。 「意地悪です」  ロッサナは言う。 「どうして黙っていたんですか?」 「聞かれなかったから、知っていたのかと」 「知らなかったから、聞かなかったんです」  それから今までのやり取りを思い出し、恥ずかしくなってくる。本人を目の前にしてタケノコの方が大事とか、そんなことを言っていたのだ。 「ロッサナ。手紙ではなく、きちんと俺の言葉で伝えたい」  エドアルドの瑠璃色の瞳は、真っすぐにロッサナを見ている。  ゴクリと喉を鳴らして、ロッサナは頷いた。 「俺と、結婚して欲しい」  だが、その言葉には頷けなかった。 「少し、考えさせてください」 「そんなにタケノコが大事か? まあ、聞かなくてもわかっているが」 「聞かなくてもわかっているなら、聞かないでください。私にとってタケノコは大事です」 「俺は?」
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