前編

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 あんな王都で暮らすよりも、こういった田舎暮らしの方があっていたのかもしれない、とロッサナはしみじみと思った。 「ロッサナ」  名前を呼ばれたので振り返ってみると、そこにはエドアルドの姿があった。 「はい、なんでしょう。エドアルドさん」 「エドでいい」 「はい?」 「だから、呼び名だ。長いからエドでいいと言っている」  上から目線の男だな、とロッサナは思った。だが自分は新参者だし、領主でもない。そこは我慢しよう。 「わかりました、エドさん。それで、どのようなご用件でしょうか」 「いや、その悪かったな」  彼の瑠璃色の瞳が、はかなく揺れていた。 「何が。ですか?」 「その、王太子との婚約破棄のことだ」 「お気になさらないでください。事実ですから」  そこでロッサナは上品に微笑んだ。 「それに、あれがなかったら今でもあの閉じ込められた学校の中です」  ロッサナは王太子より二つ年下だった。本来であれば、まだ学業に励む身。だけど、父親のトスカーニ侯爵に捨てられたから、もうあの学校に通うこともないだろう。 「すべては縁なのです」
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