10話 さとりとのじゃれあい

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10話 さとりとのじゃれあい

 いや見えるから言っているんだよな、現にわざとやっただろ?  軽く睨むが、プイっと顔を逸らされてしまった、こいつ! と思ったが手当てして貰ったので、あんまり強く出れない。  体中があっちこっち痛い、あの体罰教師、いつか仕返ししてやる。  入学してまだ二日しか経っていないが、もう既に体がボロボロ。  まず予想打にもしないか、覇王が担任で模擬戦をするとは、少し手を合わせただけで分かった。  死なない程度に手加減をされた、力を二、三割しか出してないだろう、よくて四、五割。  最初不意打ちを喰らったとは云え、そんなことを言い訳にできなくらいに圧倒された。  流石の言葉しか出てこない。伊達に名声と共に最強をやっている訳か。  いきなり襲い掛かって、あっちは半分以上も出してないと考えると、少し腹が立ってくる。     「そんな怖い顔してどうした?」  そういえば俺、さとりにアルドってバレてしまったのか。  元々こいつに対する評価は高い方では合ったが、まさかあの戦いで見破られるとは思いもしなかった。   観察力と洞察眼が高い、そしてそこに至る推理力も素晴らしい。  どんな目線で語っているんだ? アホらしくなってきた。 「なんでもない。気にするな」 「先生との戦い凄かった。後少しだったね」 「……お世辞で言っているならばやめろ、何も嬉しくない、それにあの人はまだ余力を大分残していた」  馬鹿か、少し言い過ぎだろ、言い方もきついから黙ってしまったじゃないか。  何も関係ないさとりに八つ当たりしてどうする! 悪いのは俺。  無能とは今でも思っているが戦闘面では多少自信は少なからず合った。 「わ、悪い言い過ぎた」  ポンッと頭に手が置かれ、そのまま撫でられる。  手を退かそうとしたが八つ当たりをしてしまった反面、迂闊に行動を起こす気になれない。  黙ってされるがままにされていた、突然手が退き、解放されたと思ったら頬を引っ張られた。 「にゃにすんだ」 「何を言っているか分かりません。人が褒めているのに否定するのはこの口か?」  人をおもちゃにして楽しんでやがる、頬が痛い。  意外と強く抓られジンジンと熱が篭ってくるのが分かる、そろそろ離して欲しいものだ。 「変な顔」  お前のせいだよ! 少しイラッとしたが怒りを抑えながら待つ。  するとようやく飽きたのか離してくれた。  さとりはクスクスと笑い、さっきより笑顔だった。 「ごめんちょっと意地悪したくなった」 「俺こそごめん、お前に当たってしまって」  お互いに謝り、場の空気が和らぎ自然と笑いが生まれた。  笑えることがあった訳ではないけど、不思議と俺らはお互いに笑っていた。  疲れたのかさとりは眠っていた。 「こんな所で寝るなよ、風邪引くぞ」  軽く声を掛けてみたが反応が一切ない。どうやら完全に眠りへ付いてるみたいだ。  仕方ないなと思いながらもベットへ運ぶ。  スヤスヤと気持ちよさそうに眠っている、改めてさとりの顔を見てみる。  やっぱり端正な顔立ちをしているんだな、中学の時、モテてた理由もよく分かる。  お返しと言わんばかりに俺は頭を撫でる。少ししてから手を止めた。  単純にもう飽きたから撫でるのを辞めた。もし本人にバレたら軽くしばかれそう。  リビングに戻り、一人スマホを弄っていた。 「これからどうやって過ごすかな」  アルドとバレたからには多少は覚悟をしないといけない。  学園自体には問題はない、あるとすれば生徒たちだろ、特にクラスメート。  適正の検査の時に黒色を出したからちょっと変な奴と思われただろ、それが蓋を開けて見れば、先生と互角に戦った化物。  尊敬の眼差しか、不気味がるのどっちか。  どっちにしろ嬉しくない、後者の場合、腫れ物扱いも同然だろう。  前の俺だったら喜んで受け入れたけど、今回の場合は少し事情が変わってくる。  無能か化物――話だっていつ噂になるかも分からない。  経験上すぐ伝染をし、学校中に広まるだろう。  それは非常に迷惑、何よりあの傲慢にバレるのが怖い、考えただけで身震いがしてくる。  色々と言ってくるに違いない、どうして実力を隠していたのやら、何故Fランクなんだとか、どんどんと言葉が出てくる。 「今から転入できる高校ないかな?」  まず受け入れて貰えなさそうだし、学園側が簡単に手放す気がしない。  腹を括るしかないな、しばらく休養したい、何ならばもう停学か退学にならないかな?  そもそもとしてなんであの人! 俺らFクラスの担任何だよ! 生徒の力を伸ばすためにAランク行けよ。  腹を括ったが逃げることばっかり考えてしまっている。  いやうん、仕方ないよね、だっていきなりボコボコにされたし、所謂トラウマって奴?  そうだこれを言い訳にして休養しよう……腑とさとりの顔が思い浮かんだ。 「やっぱり大人しく通おう、寮でサボっていたらさとりに殺されそう」  疲れたし俺も眠るか、体が痛いしここでいいか。  シンプルにここのベットで眠りたくない、ベットに問題がある訳じゃない。  柔らかいしフカフカで気持ちいいんだが、場所が兎に角嫌だ。  部屋の構造的に同じ部屋にベットが置かれるのは分かる。  寝室に当たるからそれは分かるんだが! どうしてベットを隣同時に置く!?  しかもムカつく事に固定されてて動かない。  壊せばいけるだろうが弁償できるほどの財力を持ち合わせてない。  だから仕方なく俺はソファーで寝ることにしている。  次の日。
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