12話 ランクの意味

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12話 ランクの意味

全員に表が行き渡ったな、今現状君らの評価はそれだ」  評価ね、アルドとして加味されている感は否めない。  Sランクは昇格、それは本当に可能なのか? 先生――覇王が唯一無二のランク。  今までSランクに誰かが昇格した事例を聞いたことがない。   「今日の授業はランク制度に付いて教えよう」  今正しくランクに付いて考えた、まるで心を読んだかのように授業を始めた。  ちょうどいいし、このまま真面目に受けよ、よく理解をしていないからここで把握する。 「この学園にはランク制度がある、知っている通りクラスで分けられている」  ここまでが学園内の周知の事実、逆にそれ以外のことは詳しく知らない。  先生の話的にここで終了ではない、もっと細かくあるのだと思われる。 「ランクは変動することが可能、そのためのここ実力主義学園が存在している」  先生の説明が入った、だんだんと場の空気が凍り、顔色を悪くするものまで現れ始めた。  そのくらいに俺らFランクからすれば、地獄、絶望に近い制度。    「実力を示せば評価が上がり、ランクにも関係してくる。逆に示さない場合そのままのランクで生活となる。中にはそのままでもいいと思っている奴がいるが、そこまでこの世界は甘くない。卒業してもランクは響く」  学園だけが実力主義だと思っていたが全く違う、現実はそんなに甘くなかった。  生徒の大半がイノセクトって云う意味も分かる。  競争社会のための練習場所って言った所だろう。学園で勝ち上がったものは文字通り、エリート街道を進む。  クロエみたいなタイプがそういう道を進んでいく。そして俺もその道に進む選択肢を与えられた。  進むかどうかは俺次第。  「まぁお前らはどう進もうがお前ら次第だ。だけど、忘れるなよオレが担任ってことを」  その一言には色々な捉え方をできそうだ、少なくとも俺が感じたのは重圧で脅迫。  覇王であるオレが担任なんだから、このままで終わらせない。  実力を示せ、強くなれと脅迫をしているように感じた。  このクラスただでは終わらないな、何かしらが起きる予感。それが吉と出るのか、凶と出るのか、まだ定かではない。どっちにしろ面白くなってきた。  授業は進み終わりのチャイムが鳴る。  やっと終わったかと体を伸ばす、やっぱ痛い。 「次の授業遅れんなよー」  先生らしい言葉を言って教室から出て行った。次の授業は何だったけ?  手帳を見る、便利なことに時間割を見ることが可能。  体育か、面倒臭いしサボるか、机にうつ伏せで寝ようと試みる。  そんな時、クラスメートが移動する中でボソッと言った言葉が耳に残る。 「本当に彼奴があのアルドかよ」 「先生手加減していただろうし、桜宮さんの勘違いだよ」 「そうだそうだ、あんなパッとしない奴がアルドな訳がない」  どうも悪かったなパッとしない奴で、だけど助かる、俺を持ち上げるではなく貶す。  そっちの方が俺的には楽だ、基本的に目立つのは好かん。 「昔も今も相変わらずボロクソ言われているね」 「授業に行かなくていいのか? 行こうと思ったけど君の背中が寂しそうだったから」 「余計なお世話だっつうの、ほっといて授業行け」 「わざわざ孤立しようとしなくていいよ、君がどうあろうと態度を変える気ないし」  ニカっと笑顔を見せてくる、こいつならば本当に態度を変えないのかもしれない。  だけど、俺に対して気に掛け過ぎな気がする。  寮が同部屋だからか? それともクラスメートの誼み?  どっちにしろ大きなお世話。    「我妻君はどんな評価だった? 私は知能と洞察力が突出していた」 「スピードが突出しており、後はどちらかっていうとバランスがいいな」 「そんな感じがする」 「その表には特異体質とか、潜在能力も書かれているのか?」  話の延長線上、それに少し興味が湧いたから聞いて見た。  さとりは複雑そうな表情を浮かべながらも言葉を紡いだ。 「うん書かれているよ、だけどあまりよく分かっていない」 「そうか」 「我妻君はこの学園でどうしたい?」  言っている意味が分からなかった。抽象的な発言、もう少し具体的に言って欲しいものだ。  そんな冗談は置いといて、全く考えていなかった。  さとりと適当に楽しく学園生活を送ろうとしか考えていなかった。  それがまさか、覇王と戦い、Sランクに昇格を言い渡されるとは思ってもいなかった。  今まで通り、無能を演じて生活をしようとしていた。 「分からん、考えたことすらない、そういうさとりはどうなんだ?」  逃げるように質問を返す、参考にしよう程度にしか考えていなかった。 「私も分からない、興味本位で実力試しのためにここへ来た程度」  二人揃って目的も目標すらない、ある意味似た者同士。  それだからか一緒に居て楽しいのは、ハハッ、急にアホらしくなってきた。   「だったら上へ突き進んでみるか?」 「え、それはどういう……」 「そのままの意味さ、実力試しに来たんだろ? だったらどこまで行けるかチャレンジして見ないか?」 「君からそんな言葉が出るとは驚きだよ」 「奇遇だな、自分でも驚きさ」  昨日の俺までならばこんなことを考えたりはしなかっただろう。  何ならばFランクで過ごしても構わないと思っていた。  何か理由が出来た訳でもない、ただの興味本位に過ぎない、俺よりこっちには少なからず、何か目的がある筈だ。ただの気のせいの可能性もある。
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