13話 アルド信者

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13話 アルド信者

おいそこの問題児二人、暇ならば少し手伝え」  雑談をしていたら扉から顔を出している先生がいた。  いつからいたんだ? と思いながら先生の下へ近づく。  山のような書類を持っていた、そして俺ら二人に半分づつ渡してきた。  案外重たかった。 「サボるにしてもう少し上手くやれな」 「それ先生が言う言葉ですか?」 「別にお前ら次第だしな授業に受けるかは、それでも担任の立場があるから表面上注意はする」  表面上って教育者としては失格だろ、立場だけ気にする放任主義者。  普通ならば怒られるし、場合によってはクビにされる。  だけど先生の場合はそれがない、逆に云うと先生だから許される行動。  学園での立場はどうかは知らないが、覇王に刃向かうとする奴なんていない。  一人を除いて、脳内には傲慢令嬢の顔が思い浮かぶ。 「どうして先生はこんなに書類を運んでいるんすか?」 「初日に無断欠席し、昨日何処かの誰かを遊んでやった罰だ」  あんたの自業自得じゃねぇか! 罰受けて当たり前じゃないか。  初日来なかったのって無断欠勤かよ、自由にもほどがあるぞこの人。  それに俺をボコしたのが罰に含まれるならば、手伝わせるなよこの不良教師! 「どこへ運べばいいんですか?」 「生徒指導室」 「この書類一体なんなんすか? 山のようにありますけど」 「色々だ、一概に説明ができない、理事長に運んどいてとしか言われとらん」  理事長、送られてきた動画と入学式で拝見したくらいしかない。  話したことはないけど、どんな人なんだろ?  雑談しながら運んでいたら生徒指導室の前に到着していた。 「そこら辺の机の上へ適当に置いてくれればいい」  言われるがまま置くと、慣れた手付きで書類を分け始めた。  ファイリングをし棚へ閉まっていた。 「手伝って貰って悪いな、仲良く話してたけどお前ら付き合ってんのか?」 「生徒のプライベートをつかづかと聞くものじゃないすよ」 「お前ら寮も同部屋だからな」 「生憎そういう関係じゃないし、今後なる予定もない」 「そうか、だったら余計な詮索をしてすまなかった、()()()()()()()()()()()を心得ろ」  先生は少し寂しそうな表情を浮かべながら作業を続けた。  どうして詮索や、その言葉を言ったのか俺らは分からなかった。少なくとも俺は検討もつかない。   「あの私たちどうすればいいですか?」 「授業を受けるならばクラスに戻れよ、もしサボるならば上手くやれ」  だからあんたが言っていい発言じゃねぇ! お互いの顔を見合わせながら取り敢えずクラスへ戻ることにした。  部屋から出ようとした時、呼び止められた。 「アルド、気を付けろよ、お前はもう学園中で噂になっているから、少し面倒事に巻き込まれるかもしれない」 「……一体誰のせいすかね」  面倒事か多少は慣れているが、この学園内では遠慮したい所だ。  ただでさえ、覇王越えを目標にしているAクラスのクロエがいるのに、これ以上目立ったら標的にされそう。  もしかしたらもうされている? 尚更目を付けられる? ごめん(こうむ)りたい。  一体どんな面倒事に巻き込まれようとしているんだか、教室へ戻る最中、揉めるような声が聞こえてきた。  叫び声と怒声が混じっている、そして何より聞きたくない単語が飛ぶ。 「アルドは最強、彼奴は偽物だ!」 「決め付けるには早すぎる、あの方こそ覇王を越える存在」  何もなかったことにして素通りしよう。 「どうする? アルド様」 「お前! こういう時にその名を口にすんな」 「実際どうするの? 内容的に君関わっているし」 「好きで話題に出てねぇよ、様子だけ見てみるか」  そもそも俺がバレた原因って先生もあるけど、お前もその要因だろうが! 仕方なく様子を見に行くと。  中庭に大きく二つのグループに分かれて屯ろしている、リーダー格が争っている。  何を争う必要があるのか。  言い合いが未だに続いているがやがて、取っ組み合いの喧嘩へと発展した。  これやばいな誰か止めて欲しい、先生でも呼んでくるか。  踵を返し向かおうとした時、鼻がムズムズし始めくしゃみがでてしまう。  その場の空気がシーンと静まり変え、さとりは手で顔を隠して、こっちを見ようとしない。  背中に痛いほど視線が刺さる、恐れ恐れ背後を見ると、全員こっちを見ていた。  やっちまった、これじゃあ自分で場所を教えたのも同然。   「アルドだ、偽物のアルドがあそこにいるぞ!」 「吊し上げろ、ハリボテにしてしまえ」 「新たな覇王へとなる者、現存の最強を越える存在」  ここは一体何時代だよ、左側の陣営物騒、そして反対の陣営は俺を持ち上げるな、そんな大それた存在ちゃう。  平凡に生活をさせてくれ、そんな気持ちと裏腹に、俺を潰そうとしている連中がにじり寄ってくる。  このままだと押し寄られ、さとりにも迷惑が掛かる。  仕方ないから出るか、重たい足取りで外へと出る。 「やっと出てきたな偽物野郎」  口悪いな、そんなに偽物とか本物とか気になるかね? こいつらの考えていることはよく分からん。 「そんなのはどうでもいいけど、騒ぐならば他所でやったらどう?」 「偽物風情が調子に乗るな」  軽く言っただけで逆上してきた、単調な攻撃を繰り出してくる。  避けるのだるいし、受け流すか、ポンっと弾いたら狼狽えた。  戦闘経験皆無か、喧嘩もろくにしてこなかったタイプだろ、大振りで拳を振ってくる。  全ての攻撃を弾き、腹へ掌底を打ち込む。  腹を抑えながら倒れ込んだ。  向かってくるのこいつだけにしてくれよ、全員相手するとなったら流石に骨が折れる。 「リーダーがやられた」 「やはり彼がアルド」 「そんな訳がない! アルドの名を語る偽物め、粛清してくれる!」  本当に俺はよく面倒事に巻き込まれるようだ、そういう体質って云われたら納得してしまいそうだ。   「その喧嘩私が譲り受けます」  どこからか声が聞こえ、気付いた頃には俺の前に一人の少女が立っていた。  
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