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14話メイドの格好をした少女
ショートの綺麗な銀髪に、生徒とは決して思えない格好をしている。
じゃあ関係者か? もしこれで生徒だったら流石に笑う。
だって、目の前にいる少女はフリルが付いたメイドを着ているのだから、手には箒を持っている。
この学園だからメイドを雇って掃除させているのか? 普通にあり得そう。
だとしたら騒ぎになったから来たって所か?
今、その喧嘩譲り受けますって言った気がする。
メイドと目が合った、まさかこっちに向かってこないようなと思った矢先、一礼だけされ、男たちの方へと向き直した。
「おいなんだお前!」
「そこを退け邪魔だ! アルド様を語る偽物を排除するのだから」
「もし邪魔するならば容赦しないぞ?」
「何をおっしゃりますか、この喧嘩譲り受けると私は言ったんですよ?」
敬語でありながらも煽り性能が高い、何より嘲笑し、憐れんだ視線を向けている。
俺のことを偽物と言って排除する連中、面倒臭いからアンチとでも言っとこう。
アンチたちは怒りを露わにしながら、メイドにジリジリと近寄る。
今すぐにでも暴発しそうだ、この機を転じれば逃げる事は可能。
しかし、そんな気分にはならなかった。
もしこのまま戦うならば見てみたいと、そう思う自分がいる。
「舐めんなよメイド風情が!」
「俺らBランクの上級生を舐めているならば相手してやる」
「あら先輩なんですね、ふふ」
こいつらBランクで、しかも上級生かよ、ランク通りならば結構上の実力者だ。
それなのにメイドは余裕な笑みを浮かべている。
相当自分に自信があると窺える、これは少し実物かもしれない。
邪魔になるといけないから離れるか、後ろに下がればさとりの近くまで戻れる。
必然的に安全な場所として戻る。
「おかえり、あのメイドさん自信ありそうだね」
「なかったら喧嘩をしようと思わないだろ、しかも相手はBランク」
中庭に団体の生徒、そしてその中心部にはメイド、凄い絵面。
多分、半分は手を出そうとしてこない、俺をアルドと認めて崇めている連中――信者。
アンチはメイドに敵意を剥き出し、その反対に信者側は眺めている。
今の所、あのメイドを味方とは思いたい、少し長い硬直状態が続く。
突然パーンと乾いた音が響く、それを皮切りに戦闘が始まった。
「今の音何?」
「誰かが手を叩い音だろ」
一体誰が叩いたんだ? 周りを見てみるがそれらしき人はいない。
あの集団の中に潜んでいるか? メイドの方に視線を移すと囲まれていた。
何の芸もない大降りの攻撃、それに対し華麗に避け、被弾させている。
囲まれながらの戦闘で一番の得策をし、抜け出している。アンチたちは各々のパンチを貰いながらも向かう。
根性あるなと少し感心をしていたらメイドの方に動きが合った。
箒をくるくる回しながら攻撃が繰り出される、一撃で仕留め、数秒経つ頃には全滅していた。
「まだ私とやりますか?」
ニコッと不敵な笑みを浮かべており、アンチは一歩後ろに下がったかと思ったら、一目散にバラバラと逃げ出した。
今残っているのは信者にメイド、俺らだけ、終始余裕だったなこいつ。
いくら傲慢だったとは云え、相手はBランクの上級生、あっさりと勝った。
このメイド一体何者だ? なんでわざわざ喧嘩を買った?
「彼女結構余裕で勝っちゃったね」
「あ、ああ、そうだな思った以上に強いな」
考えるだけ無駄な気がしてきた、騒ぎも終わったことだし教室へ戻ろ。
「ねぇねぇ君があの噂のアルドなんでしょ?」
「あ、噂? 一体何のことだい?」
「もう惚けちゃって、覇王と同格の強さを持っている生徒」
惚けてはない、噂くらいになって伝染はしていると予測だけしていた。
実際に昨日、今日で噂になっているとは思いもしなかった。
「そもそも君は一体誰だい? メイドの格好しているけどここの生徒?」
「あ、自己紹介がまだでしたね、一年のBランク所属、天宮咲夜です」
先ほどとは別人ように人懐こい表情をし、敬礼をしてくる、いやいや、俺Fランクだし君の方が上。
おいおい生徒だった、しかも同じ学年。
何でメイド服を着ているんだ? もしかしてそういう臭味!
「違うよ、全然趣味なんかじゃないよ」
心を読まれてしまった、もしかしてそういう特異体質。
「読んでないよ」
いや流石に嘘だろ、完全に心を読まれてる、違うとするならば洞察力くっそ高い。
そんな顔にでるタイプではないんだがな、趣味じゃないならば、尚更なんでメイド服?
「それで天宮さんは俺になんか用?」
「そんなに警戒をしないで欲しいな、少しお話をしてみたいと思ったんだよね」
「それだけならば戻るね」
即急にこの場を立ち去ろうとする、ここで時間を取られると、また先生に雑用を押し付けられそうだ。
それに天宮さんの後ろ、あそこにいる信者の相手をするのはもっと嫌。
二つのことを加味して、離れるという選択が得策。
「ふふ、どうしてFランクで燻っているの?」
「……言い方が悪いね、俺は君らが思っているほど出来た人間じゃない、ただの無能さ」
やはりこのスタンスを変える気にはなれない。
誰がなんと言おうが変えない、でも挑戦――チャレンジはする。
さとりの手を引いてその場を後にする。
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