15話 異能

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15話 異能

「中々に癖が強そうな人だったね」  癖は間違いなく強いだろ、メイドの格好をしながらも強い。  一定層の需要にハマりそうなタイプだ、まるで漫画とかアニメみたいな奴。  燻っているか、まるで人を試すような言い方。  あそこで無闇に反応したら相手の思う壺だっただろうし、信者共を喜ばせる行為に繋がってたかもな。 「時間的にもう遅刻確定じゃない?」 「仕方ないだろ、あんなのに巻き込まれるとは思ってもいなかったし」  終盤辺りはわざと残った、どういう結末になるのか、興味が出てしまった。  雑用覚悟で教室に戻ると、案の定授業は始まっており、担当は先生だった。  最悪だ、今すぐ走って逃げようかな? 「授業受けるならば早く席に着け」  怒ったり注意するとかもなく、何も変わらない表情で淡々と言う。  基本的に表情が変わらない、まるでロボットみたい。  俺を殴ってきたあの時以外は、少し思い出してきたら腹が立つ。  俺らは軽く頭を下げてから席へ着いた、すると先生は授業を再開した。  一体今は何を教えているんだ? まずこの人が専攻している科目が分からない! 模擬戦やったし体育?  いやでもランク制度の話をしたから社会とかもあり得る。  くだらないことを考えていると本題へと移った。 「今日のテーマは特異体質、そして異能についてだ」  黒板に大きく書いた、教室が少しざわつく、俺を含め初めて聞いたからだろう。  ただの推測だが、特異体質と異能は概念自体が同じ。呼称が別なだけ。  脳裏にはイノセクトや放火魔が連想される。 「特異体質と異能は概念自体が同じ、呼称が違うに過ぎない」  やはり呼称が違う、同じ概念、どうして呼称が違う?  何か変わるのか? 疑問に思っていると先生が補足をくれた。 「呼称だけが違うと言ったが、正確にはちょっと概念が変わる。まず異能体質は体の内部に潜んでいる細胞。それが活性化されて実体――能力へと変化するのが異能」    細胞が活性化されて能力へと変化する、まるで漫画ような話だ。   「ここまでで質問ある奴はいるか?」  先生の問いに誰も答えなかった、先生は自分が言った言葉を黒板に書く。  俺らはそれを見て、ノートに書き写す。テストとかに出るのかすら分からない。  だけど、大事だと思って書く。 「イノセクトであれば特異体質は必ずある才能。細胞に刻まれているからだ、逆にない奴はナチュラル」  つまり俺はナチュラル、反対に考えれば俺以外がイノセクト。  世界は広いようで狭いな、こんだけのイノセクトがおるとか、肩身が狭い。 「今発見されている異能は百以上、分かっている、似たような力は存在するが全く同じは必ずと言ってほどにない」  そんなに種類あるんか、似たような力、あの二人は同じ炎を出していた。  どこか違うのだろう、出力、範囲、少しの幅が違う可能性も考えられる。 「本来異能の勉強はもう少し後でいい、じゃあどうして教えたってなるだろ? お前らが学園で生き延びるためだ」  先生は不敵に笑った、まるで悪戯をする子供のような無邪気な顔。  この人教えている中で楽しんでるな、教えなくていいことを教え、どう行動をするのかを見て楽しむタイプ。 「ついでにこれも教えとこう、この学園で生き延びるために必要なこと。まず座学は必要、けれどそれ以上に武力は必須」  武力が必要? 何のためにと思ったが心当たりがいっぱい合った。  確かに必要なのかもしれない。  武力自体がどこを指しているのか分からない。  シンプルな体術とかであればまだ分がある、もし異能が関わってくるならば分は悪い。  大方予想ができる、関わってくる。そうじゃないならば異能について勉強しなくてもいい。 「異能は武力の一つ、武器へとなる。仮に武術の達人と相手しても異能を使えば、戦況をひっくり返すことも可能」 「はい、質問なんですけど、異能が弱かったり、サポート系ならば無理なのでは?」 「いい質問だな、関係ない。そいつの使い方次第で強くも弱くもなる。単純に戦闘すればいいって訳じゃない。考えて相手の裏を取るのも戦いだ」  覇王である先生の言葉だからこそ、説得力がある。他の人が言っても半信半疑になる。  最強である先生が言うと重みがある。 「模擬の時。粗方お前らの異能を表し出した、表を元に各々の課題をピックアップしといた。詳しい書類とかは後日配る」  区切りがいい所でチャイムが流れる、先生はどこかへと去っていた。  各々の課題に書類、ん? 待って俺一体どうなる?  イノセクトじゃないし、隠れた才能を持ってましたとかいう展開は存在しない。  課題って言われてもな、過ぎるのはSランク昇格の文字だけだ。 「武力か自信ないな」  色々と考えていたら吹き飛ばすように、さとりの独り言が耳に残る。  視線を向けると俯いていた、少し負のオーラを感じた。 「武力が必須って言われたけど、そこまで気にしなくてもいいだろ?」  励ましのつもりで声を掛けたが、言葉のチョイスを間違えたかもと後悔する。 「それ励ましのつもり?」 「一応……悪かったな下手くそで」 「まだ何も言ってないんだけど、ふ、ありがとう」  ◇
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