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17話 覇王とアルド
「お前らそんなことで騒ぐな、耳が痛てぇ」
いや無理だろ、あの覇王がイノセクトじゃなく、ナチュラル。
俺を含め衝撃を与える爆弾発言に近い。
ほとんどがポカーンと呆然としている、先生は首を傾げていた。
まじかこの人、言った言葉の大切さをまるで分かっていない。
「先生がナチュラルって知っているのはどのくらいいるんですか?」
「あ? 理事長とお前らだな」
確実に爆弾発言だろ! 知ってはいけない情報かも、多分何も考えずに発した。
「一々うるさい奴らだな、安心しろオレ以外の教員はイノセクトだ」
納得するように頷くものが大半、何も安心出来ない。
何を持って安心をするんだ? 安心できる要素ないだろ!
「異能は武器となると言ったが、なくても戦えるし生き延びれる。あんま深く考えなよ」
「それで俺の役目って何すか?」
「今回、お前には模擬戦をして貰う。相手はこいつら」
クラスメートの方を指を指し、指された連中は顔面蒼白になっていた。
それはそうだ、先生と模擬戦をしていた奴なんか、相手にしたくないだろ。
もし俺がそっちの立場ならば絶対にしたくない。
「何故に模擬戦?」
「言っただろ? きっかけ一つで異能は発祥する」
なるほどね、模擬戦をやってきっかけに繋がるかもしれないと云う寸法か。
◇
「そこに座れ、今お茶でも出してやる」
言われた通りに目の前に広がる長机、無数に並べられている椅子、その一つを引き座る。
ティーカップを持った先生が机に置き、対面へと座る。
優雅に紅茶を飲んでいる、その姿は様になる。
こんなまじまじと先生を見るのは初めてだな、紅茶を飲みながら観察をする。
俺同様に白い髪、髪は先生の方が長い、後ろで一つ結びをしている。
すると先生の翠眼がこっちを捉える。
「どうした紅茶が不味いか?」
「いえ、美味しいです、初めて飲んだので、味を楽しんでいます。それに」
「どうしてここに呼ばれたかって所だろ?」
先生はティーカップを置き、手を組む。
お見通しか。
授業が終わった時、居残りを命じられた。残ると先生から一言、「今日家に来い」
戸惑いはしたが行くことにした。そして現在に至る。
呼ばれた理由が分からない、もしただ雑談をするだけならば、空き教室でも借りればいい。
人に聞かれたら不味い話でもあるのか?
「考えている通りさ、顔に出ているぞ」
顔を咄嗟に隠す、クスクスと笑い声が聞こえる、前を見ると先生が微笑んている。
少しムカつくなと思いながらも、平然を装う。
そんな顔に出ていたか? ポーカーフェイスは得意な方と自負していたんだがな。
先生の洞察力が高いだけかも。
「学園では話せない話すか、何が目的すか?」
「そんな身構えるな、取って食おうなんかしない、目的かそれはお前の返答次第」
「じゃあ本題に移って下さい」
「オレがナチュラルと聞いて驚愕していたな」
「それはするでしょ、この学園は貴方のために作られたと云っても過言じゃない」
「ああそうだな」
興味がなさそうな声で返答をされた。
「そんな人間をイノセクトと思うのは自然じゃないか?」
「一理はある、まずお前らはイノセクトのことを知らな過ぎる。知りたいか?」
「興味ないすね、知ったとして何もならない」
「ハハッ、その通りだ、何もならない。けれど学園の闇を知ることができる」
この人何を言っているんだ? 学園の闇、一体何の話をしているんだ?
重苦しい空気が場を包み込む。
イノセクトを詳しく知ったとして、何もならない――だけど学園の闇を知ることができる。
これは取引、または悪魔の囁き。どれも違う。
パンドラの箱。
「何を企んでいるんですか?」
「言ったろ、お前の返答次第だ」
「イノセクトに関しては対して興味がないです。でも学園の闇? 気になるに決まっているじゃないすか!」
「ふ、いい顔をしているな!」
多分今俺はパンドラの箱を開けようとしている。
どうしてだ、悪魔の囁きにでも負けたか、違う、好奇心が唆られた。
一体どの程度でどのくらいか、聞きたいし知ってみたいと思った。
「イノセクトは進化した人類を過程され、作られた新たな種族と言ってもいい。遺伝子操作に品種改良、極め付けに世界を支配するために異能だ」
「決して同じ人間がやる所業と思えないすね」
「同意見だ、そしてこの学園は大きくそれをしている。だからこそイノセクトのための学園」
確かにこれは闇だ、思っていたのよりエグい。
世界を支配って、スケールが大きすぎて理解に苦しむ。
「実験を秘密裏にしている。まだ完成体はいないがな」
「先生も容認しているんですか?」
「馬鹿なことを聞くな、決してできる内容ではないだろ」
確かにそれはそうだ、だとすればどうして先生はこの学園に来た?
テロリストとかを相手にしている先生に取って、この学園で先生をやる必要性を感じない。
まず前提として覇王という存在は謎が多い。
唯一分かるのはSランクであり世界最強。そして今は俺たちの担任。
逆にそれ以外は全て謎。
「オレはこの学園でやることがあるんだ」
独り言のように先生は言った。少し悲しそうで、目は死んでいた。
「一体何をするんですか?」
「教えてもいいが、もう普通の生活には戻れなくなるぞ?」
今更何を言っているんだ? 学園の闇なんかを聞いてしまった時点で、もう戻ることが出来ない。
好奇心が疼く、もっと知りたいと云う渇望が出て来て仕方ない。
「いいすよ、気になるんで」
「変わった奴」
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