13人が本棚に入れています
本棚に追加
19話 スパイ
この人に名前を教えたの間違いだったかもしれん。
何度も名前で呼ぶな! まだアルドの方がマシな気がする。
「学園を潰す、これは大きくそして最終目標。だがその前にオレらはここを守らないといけない」
「……スパイですか」
ゆっくりと頷かれる、ここ実力学園であるクロードは世界各国で、注目を浴びている。
知識や技術を学ばせるために留学をさせる国も多いと聞く。
クロエもその一人だろう。
単純に我が子の実力を測るために、挑戦として送る家庭もいるが、多くは知識や技術を盗むため。
盗んだとして一体何になるかは検討もつかない。
今の所、スパイが潜入したとか云う、事件は大々的に報道をされてない。
憶測に過ぎないだろう。
「現在この学園には多くのスパイが潜入している。分かるのはコードネームだけ、それ以外の情報はまだ掴めてない」
コードネームだけ分かっている時点で凄いんだが? 名前を聞いても特定はできない。
もしスパイを探し当てるならば、相当な時間と労力が必要と見た。
俺らの同学年や上級生の方にもおるとしたら、一筋縄ではいかない、それこそ至難の技。
「スパイを見つけたら排除をする、それが第一目的だ」
「検討はついているんですか?」
横に首を振られる、それはそうだ。ついているならば何かしら動くだろ。
「生徒だけとは限らない、教師陣だってありえる」
確かに生徒だけとは限らないか、教師の可能性だって大いにある。
考えれば考えるほどに難航に進んでいく。
「今までにスパイを捕まえたことありますか?」
「少なくともオレはない、だが何度か学園に侵入し、情報を持ち帰った奴は何人もいる」
「え、それって大丈夫なんですか?」
咄嗟に反射で聞いてしまったが、普通に考えて大丈夫な訳がない。
どうして情報を盗むのかは不明。
きっと何か目的が合ってするだろうが、きっとくだらない内容だろう。
「国を発展させるため、参考にするとかよかっただろうな。テロリスト共が異能について知っていた」
「……異能?」
「お前らはまだ知らないだろうが、異能はこの国だけの力だ」
「イノセクトはこの国が作り出した?」
「言っただろ進化する人類の過程と、この国は今世界最強なんだよ」
言葉の意味を理解するのに、少し時間が掛かった。
イノセクトは進化する人類の過程、それを作ろうとした理由が必ず存在する。
今この国が世界最強と云われている理由に、繋がるだろう。
「スパイがどうして学園に潜入するか分かるか?」
何となく分かる、キーワードはいくつかある、イノセクト、異能、世界最強の国。
ここから情報を組み合わせていけば点と点が繋がる。
「量産、しかも人間兵器として」
「どうしてそこへ繋がった?」
正解も不正解も言わず、どうしてその答えになったか。
答えまでの過程を聞かれた、単純にこの人が答えを知らないかもしれない。
「イノセクトを量産すれば兵器と同等の力が入る。しかも異能は兵器以上のポテンシャルがある」
「正解だ、少しの情報だけでそこまで当てるか」
先生は微笑んでいた。決して俺は頭が悪い方ではないと思う。
この程度なら推測や憶測はできる。
「量産すれば兵器へと変貌する。それは国家、テロリストも同じ考えを持っている、幸いなことにまだイノセクトはこの国しかいない」
確かにそれはまだ幸いなこと、だが時間の問題だろう。
早急に対応をしなければ世界はイノセクトで溢れかえる。
「世界にイノセクトが、充満すれば世界は終わるだろう。完全なるイノセクトが作られるのも時間の問題」
「それを防ぐためにもスパイは見過ごせいすよね」
「ああその通りだ」
結構、無理難題な気がする。一から探すとなれば時間が掛かる。
あらかた目星をつければ別だろうが、今の所不明。
「先生、そのスパイが異能を持っている可能性は?」
「ないとは言い切れない、現にお前は別国のテロリストと合間見えている」
ん? 心当たりないぞ? テロリストといつ合った?
「放火魔だ」
「テロリストが何故こんな孤島へ?」
「スパイも一任されていたのだろう。情報を抜くと同時に削る」
スパイとしては最適な行動、ただ放火魔は目立つだろ。
あの場に先生がいなくても見つかって、終わりな気がする。
放火魔でスパイが異能を持っていることが確認できた。
「異能に勝てるか?」
「やってみないと分からないすよ、戦闘者ならば苦戦するかも」
「オレでも少しはてこづる」
先生でも……つうかこの人のはあまり参考にならない。
次元が違い過ぎて、比べ物にならない。不確定要素の相手。これほど嫌なものはない。
結局はやってみないと分からない。実戦で掴むしかない。
「ナチュラルがイノセクトに勝つ方法をしているか?」
「体術を極める」
「それも一つの手段。だが基本的に異能には通用しない。ここでは異能力者と無能力者とでも言おう。無能力者は何が合っても異能には勝てない」
「だったら俺と先生の説明がつかないですよ」
「オレらは超越者だ、並の異能力者と渡り合える。しかし戦闘者には苦戦を強いられるだろう。だからこそお前には渡す物がある」
そう言い残して、先生は奥の部屋へと消えて行った。
さっきの言い草的にまるで、一回苦戦を強いられたような言い方。
あの先生が? 到底信じられない、考え過ぎか。
タッタッと足音を立てながら先生は戻ってくる。手には黒いアタッシュケースを持っていた。
何だあれと、凝視をしいたら差し出された。
「これは?」
「開けてみろ」
考えるより先に体が動き、アタッシュケースを受け取っていた。
机に移動し言われるがままに置き、開けてみるとそこには!
「携帯型の薬ケース? 後これは忍者刀……」
◇
最初のコメントを投稿しよう!