19話 スパイ

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19話 スパイ

この人に名前を教えたの間違いだったかもしれん。  何度も名前で呼ぶな! まだアルドの方がマシな気がする。   「学園を潰す、これは大きくそして最終目標。だがその前にオレらはここを守らないといけない」 「……スパイですか」  ゆっくりと頷かれる、ここ実力学園であるクロードは世界各国で、注目を浴びている。  知識や技術を学ばせるために留学をさせる国も多いと聞く。  クロエもその一人だろう。  単純に我が子の実力を測るために、挑戦として送る家庭もいるが、多くは知識や技術を盗むため。  盗んだとして一体何になるかは検討もつかない。  今の所、スパイが潜入したとか云う、事件は大々的に報道をされてない。  憶測に過ぎないだろう。 「現在この学園には多くのスパイが潜入している。分かるのはコードネームだけ、それ以外の情報はまだ掴めてない」  コードネームだけ分かっている時点で凄いんだが? 名前を聞いても特定はできない。  もしスパイを探し当てるならば、相当な時間と労力が必要と見た。  俺らの同学年や上級生の方にもおるとしたら、一筋縄ではいかない、それこそ至難の技。 「スパイを見つけたら排除をする、それが第一目的だ」 「検討はついているんですか?」  横に首を振られる、それはそうだ。ついているならば何かしら動くだろ。 「生徒だけとは限らない、教師陣だってありえる」  確かに生徒だけとは限らないか、教師の可能性だって大いにある。  考えれば考えるほどに難航に進んでいく。 「今までにスパイを捕まえたことありますか?」 「少なくともオレはない、だが何度か学園に侵入し、情報を持ち帰った奴は何人もいる」 「え、それって大丈夫なんですか?」  咄嗟に反射で聞いてしまったが、普通に考えて大丈夫な訳がない。  どうして情報を盗むのかは不明。  きっと何か目的が合ってするだろうが、きっとくだらない内容だろう。 「国を発展させるため、参考にするとかよかっただろうな。テロリスト共が異能について知っていた」 「……異能?」 「お前らはまだ知らないだろうが、異能はこの国だけの力だ」 「イノセクトはこの国が作り出した?」 「言っただろ進化する人類の過程と、この国は今世界最強なんだよ」  言葉の意味を理解するのに、少し時間が掛かった。  イノセクトは進化する人類の過程、それを作ろうとした理由が必ず存在する。  今この国が世界最強と云われている理由に、繋がるだろう。 「スパイがどうして学園に潜入するか分かるか?」    何となく分かる、キーワードはいくつかある、イノセクト、異能、世界最強の国。  ここから情報を組み合わせていけば点と点が繋がる。 「量産、しかも人間兵器として」 「どうしてそこへ繋がった?」  正解も不正解も言わず、どうしてその答えになったか。  答えまでの過程を聞かれた、単純にこの人が答えを知らないかもしれない。    「イノセクトを量産すれば兵器と同等の力が入る。しかも異能は兵器以上のポテンシャルがある」 「正解だ、少しの情報だけでそこまで当てるか」  先生は微笑んでいた。決して俺は頭が悪い方ではないと思う。  この程度なら推測や憶測はできる。  「量産すれば兵器へと変貌する。それは国家、テロリストも同じ考えを持っている、幸いなことにまだイノセクトはこの国しかいない」  確かにそれはまだ幸いなこと、だが時間の問題だろう。  早急に対応をしなければ世界はイノセクトで溢れかえる。 「世界にイノセクトが、充満すれば世界は終わるだろう。完全なるイノセクトが作られるのも時間の問題」 「それを防ぐためにもスパイは見過ごせいすよね」 「ああその通りだ」  結構、無理難題な気がする。一から探すとなれば時間が掛かる。  あらかた目星をつければ別だろうが、今の所不明。   「先生、そのスパイが異能を持っている可能性は?」 「ないとは言い切れない、現にお前は別国のテロリストと合間見えている」  ん? 心当たりないぞ? テロリストといつ合った? 「放火魔だ」 「テロリストが何故こんな孤島へ?」 「スパイも一任されていたのだろう。情報を抜くと同時に削る」  スパイとしては最適な行動、ただ放火魔は目立つだろ。  あの場に先生がいなくても見つかって、終わりな気がする。  放火魔でスパイが異能を持っていることが確認できた。 「異能に勝てるか?」 「やってみないと分からないすよ、戦闘者ならば苦戦するかも」 「オレでも少しはてこづる」  先生でも……つうかこの人のはあまり参考にならない。  次元が違い過ぎて、比べ物にならない。不確定要素の相手。これほど嫌なものはない。  結局はやってみないと分からない。実戦で掴むしかない。 「ナチュラルがイノセクトに勝つ方法をしているか?」 「体術を極める」 「それも一つの手段。だが基本的に異能には通用しない。ここでは異能力者と無能力者とでも言おう。無能力者は何が合っても異能には勝てない」 「だったら俺と先生の説明がつかないですよ」 「オレらは超越者だ、並の異能力者と渡り合える。しかし戦闘者には苦戦を強いられるだろう。だからこそお前には渡す物がある」  そう言い残して、先生は奥の部屋へと消えて行った。  さっきの言い草的にまるで、一回苦戦を強いられたような言い方。  あの先生が? 到底信じられない、考え過ぎか。  タッタッと足音を立てながら先生は戻ってくる。手には黒いアタッシュケースを持っていた。  何だあれと、凝視をしいたら差し出された。   「これは?」 「開けてみろ」  考えるより先に体が動き、アタッシュケースを受け取っていた。  机に移動し言われるがままに置き、開けてみるとそこには! 「携帯型の薬ケース? 後これは忍者刀……」    ◇  
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