20話 調査

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20話 調査

 先生と話してから約一週間くらい経った。  各々でスパイと思わしき人間に目星を付け、調査をしていた。  今の所それらしき相手とは遭遇していない。 「まだ異能に覚醒している奴はいなさそうだな」  先生の一言、場に緊張が走る。  異能の説明が入ってからも一週間程度、やはりというべきか、発祥しているものはいない。  きっかけの要因として、何十回、何百回と模擬戦をさせられるが、そろそろ飽きてきた。  それ以前に大体が戦意喪失してくるため、模擬戦にはならない。  次は誰かと周囲を見渡すと、怯えた表情でこっちを見られる。  俺は獣か! と思うが、一方的にやられている人間からすれば、あまり変わらない。  ただ二人の少女は果敢に挑んでくる。 「大丈夫か? 無理して挑まんくてもいいんだぞ」 「無理くらいはさせてよ、いち早く、発祥はさせたいし」  手を差し出すと取り、立ち上がる。  軽口を叩けるからまだ元気はある、だが一目瞭然の実力差。  さとりは努力家、けれど、努力では補えないくらいに戦闘のセンスがゼロに等しい。  お世辞にも上達をしているとは言えない。  相手が俺だからとか関係なしに、戦いには向いてない。 「やっぱ速いね、手加減して貰っているのに捉えることができない」 「動体視力が高くないと厳しいだろうな」 「動体視力か……先生と戦っている姿を見た時は、目で追うことできたんだけどな」    今なんて言った? 先生との戦いの最中を目で追った?  さとりにそんなことが可能なのか? 否、難しいだろう。  それこそ、異能でも発祥しない限り……。 「あ、そうだ。言い忘れていたがさとりとシロ」 『『はい何でしょうか』』 「お前ら来月から実習な」 「え? あの一体どこにですか?」 「ヴァーミリオン家」  その言葉にさとりは硬直し、シロは口笛を吹いてた。  この学園、実習あるんだなとまず思った、そして次に、実習場所に驚きが隠せない。  まさかのヴァーミリオン家。  中々行くことはできないだろう、有名な財閥でありながらも、クロエを輩出した優秀一家。    「どうして私たちが?」  当然の疑問を溢した。 「オレに聞くな、上が決めたことだ。そして半年後にある恒例の行事がある」 「昇格試験」    昇格試験、内容は分からないがランクが関係しているのだろう。  試験内容に対して、優秀な結果を出せばランクが昇格するとかだろ。 「何となく想像つくとだろう、結果を出せばランクが上がる。試験内容は決まってないが、前年的に考えれば模擬戦」 「どういう模擬戦すか?」 「個々の能力値が優先だから、勝ち抜きだろう。A〜Fのランク勝ち抜きトーナメント程度に、思ってくれればいい」  勝ち抜きトーナメント、まるで武道大会。 「普通に考えればお前らが生き残るとは無理だろうな」 「だったらどうすればいいんですか!」  一人の男子生徒は叫んだ。  この場にいるものならば誰もが思うことだろう。   「だから来月辺りにDクラスとの模擬線を組んだ、白桜とでは力量の差があり過ぎて、お前らが覚醒するに至らない。だから近いレベルでありながら強い相手を用意した」  じゃあ今まで何のために俺は模擬をやらされたんだ?  無意味なことじゃないか! しかも平然と下の名前で呼びやがった。  クラスメートは戸惑い、「白桜? 誰」と言う言葉が聞こえる。  うん分かるよ? 誰ってなるよね! 今までアルド呼びが急に名前に変わるんだもん。  さとりでさえ、首を傾げている。少し間を空けてから指を指してくる。 「こっち指すんじゃねぇ」 「へー白桜って言うんだ」 「お前絶対面白がっているだろ!」  ◇  あの後散々揶揄われて解放をされた。  あの教師いつかぶっ飛ばす! 「やっぱり傷のこと突っ込まれたな」  近くに合った鏡が俺を写し出す、右頬に絆創膏を貼った、自分の姿を見る。  この程度で済んだのであれば、まだマシな方だろう。  手練れだった、不意にも傷をつけられるとは思いもしなかった。  ……先生からこのアタッシュケースを受け取った帰り、黒フードを被った謎の人物に襲われた。  撃退しようとしたが一枚上手だった。  仕舞いには頬に切り傷。 「誰かは知らんけど、絶対潰してやる」  こんな所で時間を潰している暇はない、鏡の前でずっとたっていたら、ナルシストに思われる。  幸いにも目的の場所は目の前にある。  ボロい倉庫に入る、中は少し埃はあるが、案外綺麗なものだった。  棚に綺麗に物が配列されている、入り口から左棚にある小物を見て、手にする。    「これじゃないな」  手に取ったものを戻し、奥へと進んでいくと、入り口の方から気配を感じた。  尻目で見ると、ここでは妙に目立つ、フリルの付いたメイド服。 「ここになんか用か? それとも俺か」 「自意識過剰じゃないですか?」 「そりゃ失敬しました」  天宮を相手することなく、小物を手に取り探し物をしている。  どんだけ探しても見つかる気配がない、本当、ここにあるのか?  と、思ってしまう程度に見つからない、生徒手帳を出し、地図を見てみるが倉庫はここにしかない。   「一体何を探しているんですか?」 「秘密、答える道理がない」
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