21話 スパイ発覚

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21話 スパイ発覚

酷くない?」    笑いながら、こっちへにじり寄ってくる。  尻目で警戒をしながら探し物を続ける、すると一定数離れた、場所に天宮が立つ。 「天宮さんも何か探し物?」 「え、教えない、冷たい反応をしたのはそっちだから」  あ、実に面倒臭い。   この人こんな面倒臭い性格をしてるの?  と云っても、合って喋るの二回目だし、俺が性格を知らなくても可笑しくはない。   洞察力とか高い人間でも、一目で性格を見抜くことはできない。  きっとそれと一緒に違いないだろう。  自分一人で納得し、振り返る。  「この学園の生徒なのに、メイド服って目立ちたがり?」   「事情があるのよ、それともメイド服って嫌い?」  《・》()()()、メイド服が嫌いかって、聞いてくる時点であざとい。   こいつ自分の顔面偏差値分かっているな? それを上手く利用しようとしている。   整った顔にメイド服、普通の男ならばイチコロで落とせそうな仕草。    あざといの一言しか出てこない。大体これで、距離感が近く、スキンシップ激しいだったら、狙ってやる策士。 「うーん、あんまり興味がないかな、ただ相手を油断させるには絶好の格好とは思う」 「油断させてどうするんですか?」 「さぁ? そこまでは分からない、ただ感想を述べたに過ぎない」  実際メイドっていう立場とか、メイド服の格好だけだったら油断はする。  後者の場合はコスプレの認識、前者ならばどこかの従者。  到底自分に対して不利や、敵対とは考えないだろう。  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 「今日は箒持ってないんだな」 「え、あうん。今日は持ってない」  はっきりと言わず、少し濁した言い方。  普段から箒を持ち歩いてる訳ではない。  あの時はたまたま持っていただけ、まるで虚を突かれた反応だった。 「君が持っている、そのアタッシュケースは何?」 「あーこれ気になるのか?」 「そのアタッシュケースも中々、目立ちたがりじゃない?」  ついにアタッシュケースを気にし始めたか。  天宮は気付かれてないと、思っているだろうが、倉庫に入ってきた瞬間。  アタッシュケースを、何回かチラチラ見ていたのを知っている。  そろそろ潮時だろう。 「そうかもな、天宮さんはさ、スパイって存在すると思う?」  一瞬、天宮の体がビクッと動いた。  今完全に反応した、まるで自分がスパイと表しているようだ。  ここで畳み掛けてもいい。 「スパイか存在しないと思う。あんなのは空想上のフィクションだよ」  普通に考えればその理論は正しいのかもしれない。けど現にこの学園には何人のも、スパイが侵入している。  それに目の前の人物をスパイと睨んでいる。   「俺は天宮さんをスパイと思っているんだけどね」 「私? どうしてそう思うの?」    不思議そうに首を傾げる。  単純な話、メイドの格好をしているのは何か、意味があるのではと睨んでいる。  俺を襲った黒フードに放火魔。  これら全てが単独犯ではなく、計画をした犯行でそこに天宮も関連していると、踏んでいる。 「こんな所に何も用なしに来ないだろ? もし合ったとして俺がいない時に来ればいい」 「そんなのたまたまタイミングが被っただけじゃん!」  だんだんと語尾が強くなっていき、怒声に近づいてる。  明らかに苛立ていた。 「仮にタイミング被ったとして、どうして()()()()()()()()()()()()」  次の瞬間、さっきまでの表情、振る舞いが嘘のように、顔が引き攣り後ずさっていた。  完璧にポーカーフェイスが崩れた。 「そ、そんなのたまたまじゃん!」 「そうか、たまたまか。俺がそこの扉を開けた時、大きな音がしたんだがな」  気配に関しても入ってきてから気づいた。  Bランクの天宮と云え、気配を殺し、物音を立てずに中へ入るのは至難の技。  それこそプロじゃないと難しいだろう。 「いい加減正体を表せよ、コードネームクロック」  コードネームクロック、先生との密談の時、一番最初に聞かされたスパイの名前。  スパイとしての実力は半人前。  だが、それを軽く補い、凌駕するほどに暗殺の腕はピカイチ。 「はー、バレたならば仕方ないか」  頭のカチューシャを投げ捨て、こっちを睨む。  空気と雰囲気が変わった、きっとこっちの方が本性。  暗殺者ならばメイド服を着ているならば納得できる部分がある。  ターゲットを殺すためには変装が必要。  だけどこいつの場合は違う。 「お前暗殺者の前に単なるメイドだろ?」 「そこまでお見通しでしたか、そう私はメイドでもあるのですよ」 「……ヴァーミリオン家の刺客か」  と、なると一連の裏にはヴァーミリオンが関係している? 「半分正解で半分不正解。私はクロエ様の護衛しか頼まれてない」 「スパイを依頼したのは別にいるって所か」 「そこまで教える義理はないよ、バレてしまったし消えるね」  背を向け立ち去ろうしている、何事も起きなくてよかった。  本当にそうか? スパイ――それも暗殺者がただで買えるとは思わない。  それに何か引っ掛かる、『二人には実習に行って貰う』はは、そういうことね。 「帰るのか? てっきり俺はお前らの機密情報が載っている、このアタッシュケースを奪いに来たのかと思ったよ」  瞬きをした頃には、眼前に天宮の姿が合った。  咄嗟に胸の前に腕をクロスにした時、重たい一撃がのし掛かり吹き飛んだ。  ドドドっと物音を立てながら壁に衝突し、空を見上げていた。  背中が痛い、腕も痺れやがる。  立ち上がりながら天宮の方を見る、あの華奢な体型で、壁を突き破るほどの一撃。    
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