23話 決着

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23話 決着

 後悔をする暇もなく、ナイフが永遠と思うほどに降り注がれる。  まるでナイフの雨、取り敢えずはここから脱出だ。  入り口に向かって走り出そうとした。  すると入り口にはクロックがおり、ご丁寧に扉を閉めていた。  あのくそ女、絶対痛い目合わせる! 閉まっているとか関係なしに突撃する。  元々はボロい倉庫、入り口も簡単に壊れる。  だが、勢いが余りに良すぎて、地面に転がる。  制服が茶色へと汚れていく、さとりに見られたら弄り倒されそうだな。  体制を整えようとするも、相変わらずのナイフが飛ぶ。  動きながら捌くのにも限度がある。  いつ視界が奪われるかも分からない。異能者の相手は骨が折れる。 「どうした? 防御だけじゃ私に勝てないよ」 「くっそ、調子に乗りやがって」  倉庫から少し離れた校舎に身を隠す、一般的な白の床に壁、窓が感覚を開きながらある。  広さも十分ある、できるならばここで撃退したいものだ。  体が鉛のように重たい、ナイフで傷つけられた場所も、灼熱ような熱を帯び始めた。  対策を練らないと――脳裏には先生との会話が思い浮かぶ。 「この薬と忍者刀は何ですか?」 「白桜、一般のナチュラルが異能者にどうやって勝つと思う?」 「肉体を鍛えるとか?」 「それも一つの手、だが大きく分けて二つある。異能に近い力を身につけるか……」  この薬は異能に近い力を開花させる……筈。先生の言い方的にはほぼ確実。  それなのに開花する気配を感じ取れない。  もう一つの手もあるが、確実に倒せる算段がない限り使えない。  やっぱナイフ一本で頑張るしかない、鉛のような体に鞭を打って、外へと出る。  今の俺は絶好の的だろう。  視界を奪うか? それとも時を止めてからの攻撃。  一体どっちでくる、自然と目を瞑る、今はこうした方がいいと思えたから。  無数の風切り音が聞こる、体は動かず、指一本も動かすことができない。  まるで石のように動かない、ただ思考はクリア。ナイフの軌道が見える。  スイッチを押されたかのように、体が動き出しナイフは飛ぶ。 「惜しいけど、君との戦いもこれで終わり」  ナイフが飛んできてるのに、不思議と冷静だ。さっきまでは防ぐので背一杯だった。  今は違う、ナイフの軌道が見える以前に、動きがスローモーション。  掻い潜りながらも当たりそうな時は弾く、ジワジワとクロックとの距離を潰す。 「ッ!? 先までと動きがまるで別人のように違う」  焦り、表情を曇らせている、やっと余裕から脱却させれた。  自分でも感じている、動きが違う。  体が羽のように軽いし、次にどう動けばいいか、瞬時に頭の中に入る。  一歩踏み込めば、脱兎の如く速さで近寄りナイフを振る。   「来るな!」  視界が真っ暗になる、こいつの異能は本当に厄介だ。  だけど、今の俺には通用しない、暗闇だろうが関係なしに連撃を繰り出し、追い詰めてる実感がある。  やがて視界は戻り、鮮血を流した敵を目にした。 「こっちへ来るな! とっとと死んでしまえ」  暗殺者ではなく儚い一人の少女の叫びが響く。  恐怖に顔を歪ませ、引き離すように投げナイフが飛ぶ。  華麗に躱しながらナイフを穿つ。  切り裂き、強烈な後ろ蹴りを叩き込む。クロックは一、二メートル飛び悶絶をしていた。 「おいどうした? こんなものではないだろ? さっきまで遊んでくれたんだ、覚悟くらいはできてるだろうな!」  一歩踏み込んだ、だけで地面は抉れ、距離を潰せる。  鉄槌を振り下ろし……手応えは一切なかった、また時間でも止められた。  と思った矢先、背後から気配を感じ、振り向くよりさっきにステップをする 「今度は斬り合いか?」 「私が負ける訳がない!」  もう暗殺者クロックとしての威厳は崩れ初めている。  今目の前にいるのはBランクの天宮咲夜。  刺突、斬撃が交互に飛んでくる、全てを弾き返しカウンターする。  血飛沫は舞い、天宮の顔が痛みによって歪む、もうポーカーフェイスも消え去った。  勝負は明らかに明白、それでも諦めずに挑み続ける。  ……体の奥底から熱い感覚がし、()()()()()()()()()()。  一刀する。  天宮の横を通り過ぎる、次の刹那、無数の斬撃が天宮――クロックを襲い、全身から血飛沫が舞う。  もう確実に瀕死、それでも諦めずにナイフを握り、向かってくる。  シンプルに根性が凄い、痛みに耐えながらも挑む。 「お前とは別の出会い方をしてみたかったものだ」 「な、何勝った気で……いるんだ」 「もう勝負は付いたんだよ」  ナイフを穿つ、最後の一撃となり、ことが切れたように倒れた。  このままほっとけば確実に死ぬ、捕虜にしようと近寄った時、強烈な殺意がこっちに向かう。  殺意がする方に視線を向けると、黒フードの人物が西洋の剣を持って近寄る。  またこいつか! あの時のようにはやられない! 連続で穿つが全て防がれ、足元にコロコロと音を立てながら転がる物体。 「ッ!! 手榴弾」  気づく頃には既に遅し、爆裂音と一緒に爆風が俺らを襲う。  灼熱ような爆風がもろに当たり、燃えるような感覚。  ◇ 「くっそ、またしてやられた、制服がボロボロだなちくしょう」
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