25話 暫定的なSランク

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25話 暫定的なSランク

「……暇だな」  先生との密談の後、授業を受けるためにクラスへと戻ってきた。  横の席は相変わらず空席、さとりがいないってのは慣れないな。  今月の頭からシロとさとりは実習へと行った。  後から聞いた話によると、学園内で実習に行ったのは二人だけ、他の生徒は行ってない。  何かを理由に選ばれたのだろう。  少なからずさとりは喜んでいた。 「どうも腑に落ちない」  今回の実習、何か裏があるような気がして仕方ない、天宮がスパイだったこともある。  今の少ない情報だけだと何も言えない。  現、ヴァーミリオン当主、いい噂は聞かない。  突然、日本に現れ財閥として名を轟かせた、神出鬼没の一族。  今の日本を裏で支配しているって話もよく聞く。  学園を支柱に置くために娘を派遣し、選ばれた生徒を自分の屋敷へと招待した。 「アホらしい、考え過ぎだ」 「何お前は独り言を呟いてるんだ?」  先生の言葉で我に戻った。  まるで何かに捕らえられていた感覚だった。  何もなければいいんだがな、そんな心配を吹き飛ばすようにスマホが鳴る。  スマホを見ると、さとりからのメッセージだった。  自然と顔が綻び、口角が上がっているのが分かる。 『真面目に授業受けているか!』 『開口一番のメッセージがそれかい』    本当こいつとおるとリズムが変になって仕方ない。  メッセージが送れるってことは何も起きてないか。  だけど、胸騒ぎがする、これが杞憂で終わってくれたらいいのだが……。    「今日なんか大事な話があるらしいから、お前ら体育館に集まれよ」  先生の言葉を聞き、各々は移動をし始め、今教室には俺と先生の二人だけいる。 「どうしたお前は行かないのか?」 「行く必要があるならば行きますよ、ないならば別にいいかな」 「冷めているな、別にいいがな、Dクラスの模擬戦だけは出ろよ」  それを言い残して、先生は教室から去った。  模擬戦やるって言って、一月半は経っているのか、俺が出た所で意味ない気が。  念のためにその日は出るか、教室を抜け出し、優雅に散歩をしていると、会いたくない人物に出会してしまった。  一礼をして横を通ろうしたら腕を掴まれた。  逃してくれないかなと顔を覗くと、獣のような目で睨まれた。 「話がある、終わるまでこの手絶対離さないから」  くっそ、見つけた瞬間、走って逃げれば良かった。  話って何? 絶対に俺がSランクに暫定した話だろ、ほんまこいつみたいな面倒臭いの相手したくないもんで、体育館に行かなかった。  結局捕まってれば意味ない。 「噂を聞いた! どうして貴方がSランクにいるのか説明して」  体を乗り出して聞いてくる。  説明しろって言われても難しいな、アルドだから? スパイを覇王と倒したから、どれでもややこしくなる。  だとしたら、どうにかして抜け出す手段を考える! 「……私が先に覇王に追いつくつもりだったのに」  非常に何か、嫌な予感がするな、今すぐでもいいから逃げ出したい。 「こうなったら私と勝負しなさい!」  ですよね! こんちくしょう、嫌な予感が的中してしまった。 「普通に嫌だよ、メリットないし、そんなに追いつきたいならば頑張れよ」  うん、なんか言葉のチョイスを盛大にミスった気がする。  気のせいと信じて、クロエを見るとプルプルと体が震え始め、今にでも爆発しそうなくらいに、顔が真っ赤。  完全に言葉間違えってしまった。  今からでも遅くない、言い繕むか。 「こんなコケにされたのは人生で初めて、絶対に叩き潰してやる」  完全に怒ってらっしゃる、やるしかないのか、一瞬腕を離して貰えた。  その隙を見逃さずに、抜け出し大きく距離を取る。  前もこんなことが合ったな、初めて会った時を思い出す。  あの時は躱すだけだった、流石に今回は攻撃をしないとやられそうだ。  構えを取り、臨戦態勢の状態、相手も同じく。  そして先ほどとは別人のような雰囲気を醸し出してる。   「お前らそこまでだ」  俺とクロエは一気に声の主の方を見る。  声の主は先生だった、いつのまにか、間に割って入ってた。  クロエは詳しそうに先生を思い切り睨んでる。 「どうして覇王がここに! それ以前に邪魔をしないで下さい」 「オレがここに何も不思議ないだろ、ここの教員だぞ」  何一つ話が噛み合ってない気する、まぁいいか。  戦わなくて済むならばそっちの方がいい、安堵を覚え、胸を撫で下ろす。 「そこまでして戦いならば、いいステージがある」 「全校生徒で行われる昇格試験のことを言っている?」 「ご名答、その試験の結果次第では、アルドの暫定ランクも本決定かどうか決まる」  ◇  やっと解放された、先生が止めに入ってくれたのはいいけど、中々に解放して貰えなかった。  Aランク――女王の威厳がないほどに、駄々を捏ねられた。  見た目同様に小学生のそれだった。  年齢は俺と同年代ってのが信じられないほどにだ。  『聞いて、なんか学ぶことが増えて、まだ学園に戻れないぽい」  スマホにきてる通知を見て、校舎を曲がり、一室に入る。  ガチャっと音がし、キョロキョロと見渡す同年代の女子がいた。  背後に周り、声を掛ける。 「人の後をつけ回すとはいい趣味してんなシロ!」  シロは動揺したのか一歩下がった、さとりのメッセージはあれで終了している。  彼奴だけ居残り期間? シロは学園に戻らされた。 「さとりはどうした?」 「知らない」 「そうか、じゃあ次に何故俺の後を付けてた?」 「君に用があるから」 「俺にはない、もう一度聞く、さとりはどうした? 何故お前だけが学園にいる?」
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