26話 白桜とシロ

1/1
前へ
/32ページ
次へ

26話 白桜とシロ

 大体こいつ一人だけが戻ってきたのであれば、授業にも体育館での集会に出てないのも可笑しい。  俺同様にサボり魔の線もある。  けれど前者は今までの傾向的にない、シロは意外と真面目だ。  ほとんどの授業を真面目に出ている、サボった話も姿を見たことや聞いたことがない。  考えられるとすれば何か訳がある。  人、特に学園側に知られたくない理由、それが何かしらあるため、隠密のように動いてる。 「先も言ったけど知らないよ、桜宮さんと交流ないし」  確かにさとりとシロには接点がほぼない。  お互いに比較的に関わろうと試みてないからだ、シロ自身孤立している。  逆にさとりは俺意外とほぼ関わりを持っていない。  二人に交流がないのは正しい、だけど! 少なくともさとりは陽キャの塊だ。  自習先が同じとなればコミュニケーションを取るだろう。 「自習先が一緒なのに知らない訳がないだろ、どうしてお前がここにいる」 「だから交流がない」 「聞いてんだろ! さとりはどうした!」 「……貴方に取って桜宮さんは何?」  シロの言っている意味が分からなかった。 「大事な人? 恋人か何か?」  最近よく恋人、大切な人という単語を耳にする。 「大切かどうか分からん、恋人ではない」 「あっそう、てっきり恋人かなんかだと思っていた」 「どうしてそう思った」 「だって君、桜宮さんのことになると、物凄く感情的だし」  この俺が感情的? 自分自身のことなのに実感がない。  ニカっとシロは笑みを浮かべる、悔しくもその年相応の端正な顔から放たれる笑顔に、目を奪われてしまった。 「君が感情的になるのは覇王との戦いだけでしょ?」 「俺を一体なんだと思っている?」 「最強、覇王とはベクトルの違う最強」  ベクトル違いか、あんな人と一緒にされると心が折れる。  全てが別次元、そして完全無欠のような男。  あの人を天才とすれば俺はただの凡人。 「あの子は無事だよ、非常に強い子」  物理、実力でもなく、心――人間性って意味だろう。  そこに関しては俺も賛同。  この学園は俺らが思っていたより実力が高かった、そして俺がアルドと発覚した。  それなのに彼奴は目蹴ずに上を目指す、探究心を持っていた。  だからこそ一緒に上がってみたいと思った。   「自習先でなんか会ったんだな」 「うん、後々教えて上げるよ、私の頼みを聞いてくれるならね」 「一体俺へ何を求めている?」  一体お前は何をしているんだ、さっきまで来てた、連絡全てが虚像。  悟らせないためのものだろう。  ……ヴァーミリオン家、お前が関わっていい代物なんかじゃないぞ!! 「私を鍛えて欲しい!」 「は?」  
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加