3話 傲慢な令嬢

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3話 傲慢な令嬢

子供が楽しめそうな遊具がいっぱいある中、中央の場所で輩に囲まれてしまう。  不幸中の幸いに、子供が公園にいなくて助かった。  こんな現場を見てしまったら怖くて、公園に来れないとかになると大問題だ。  戯言はここら辺にしといて、一体何なんだこいつら?  俺に何か用があるから公園まで誘導して囲んでいる。  一見ただの集団リンチにしか見えない。 「で、なんか用?」  聞いてみると、誰も答えてくれずシーンとする。おいおいふざけんな! 誰でもいいから答えろや。  すると、丁度対面にいる輩が口を開く。 「こんな状況なのに冷静とは肝が座ってやがるな」  若干キレ気味で言われた。冷静以前に何も、ただ囲まれたという事実は変わらない。  一々騒がしく慌てふめく意味もないだろう。  そもそも学校に行く途中で絡んできたのはお前たちだろ?  囲んでいる奴の顔を見るが、見覚えがない。  こいつらに何かした覚えも恨まれるようなこともしてないんだがな。 「そろそろ本題に入ってくれない? 君らに恨まれることはしてないぞ?」 「報復さ、神谷さんをぶっ飛ばした報復だよ」  報復? つうか神谷さんって誰だ? やばい分からない。  ん? こいつ今俺がぶっ飛ばしたって言った?  と、なるとあの喧嘩が強いごっこしてた彼奴しかいない。 「それで、その神谷だっけ? そいつの報復ね、集団でやる気か?」 「そうさ!」  男は殴り掛かってきた、次の瞬間。公園に声が響き木霊する。 「集団でリンチとか恥ずかしくないのかしら?」  どこからか声が聞こえ、声の主を探すと遊具の上に小学生? が立っていた。  その小学生は跳び、囲んでいる輩の頭部に(かかと)落としをして着地した。  俺を含め、その場の全員が唖然とする。  多分、小学生以外はこう思っただろう(一体なんだこいつ!?)  俺を指を差し、偉そうに言ってくる。 「リンチされかけた貴方助けてあげましょうか?」  非常に偉そうで生意気と感じた。助けてあげましょうか、それは反対に他の連中に喧嘩を売っているのと一緒。  果たして小学生の少女が勝ってる?  そんな疑問は一瞬で晴れてしまった。どこからか鉄棒のような物を取り出し、構える。  短いけど、殴るよりリーチがあるから有利。  と考えていたらそれは間違いだと気付かされた。その場に伏せる。  刹那、薙ぎ払いで全員吹っ飛んでいた。  短いリーチの鉄棒は長い槍へと変化していた。折り畳み式の槍。  少女はニヤニヤと薄っすら笑みを浮かべながら、こっちに近寄ってくる。 「へーあれを避けるなんて中々にやるね」 「普通、折り畳み式の槍を携帯なんてするか!?」 「あら私を普通の人と一緒にされては困るね」  さっきからこいつマジで偉そう。普通の人と一緒にするな? 確かにそうだろうな! 普通のやつは折り畳み式の槍を携帯しない。  学校に行くって云うのに制服が砂埃で汚れてしまった。  もし避けなかったらこいつらみたいになってたのかと、考えると身震いする。  少女の攻撃を喰らった輩たちは全員悶絶をしている。  立ち上がることは出来ず、ひたすらに呻き声を発していた。  制服についた砂を払いながら立ち上がる。 「助けてくれたのは感謝する。それじゃあ急いでいるからバイバイ」  急ぎ足でその場を去ろうとしたら横薙ぎが飛んでくる。  当たる直前に跳び躱す。少し離れた場所に着地。 「一体何のつもりだ?」 「うーん強いて言うならば見定めかな? 君は少し有名だから、イノセクトを倒した白髪の男」  少女の真紅の瞳が俺を捉えている。こいつ偉そうとかそういうのではない。  強いて言うならば傲慢。  少し有名か、嬉しくないな、直力目立ちたくはなかった。  さとりを助ける為だったから仕方ない。  まず有名だからなんだ? 見定めして何の意味がある?   「急いでいるんだよ、小学生の相手をしている暇なんかない」  言い終わる瞬間、びっくりするくらいドスが効いた低い声。 「あ? 誰が小学生だ」  え、小学生じゃないの? いやいやまさかな、その体型で中学生とか高校生はない。 「こう見えても中学三年生だけど? クロード学園に入学決まっているけど?」  と思っていた時期もありました。マジで!? こいつ俺と同い年。  しかもクロード学園に入学が決まっている。  どうりで強いわけだ。こんなロリ体型で複数人を吹き飛ばす力があるとか怖っわ。   「貴方もクロードに来るんでしょ?」 「どうだろうな? 別にエリートになりたいとかそんな願望はない」 「君、詰まらない人間だね。実力があるのに行動をしようとしない」 「その時が来たら行動するさ」  少女は不服そうな表情を浮かべながらも槍をしまった。  一先ずこれで終了か? 警戒をしながらも安堵を覚えた。 「見定めはしたし、私は帰る。またね白髪の男」 「もう二度と会いたくないぞ小学生」 「その生意気な口、二度と開けないようにしてあげようか?」 「怖い怖い」 「クロエ・ヴァーミリオン。私の名前よ覚えてなさい」  一礼をし、そそくさと去っていく。結構全速力で学校に向かう。  クロエ・ヴァーミリオン。その名は生活をしていれば一度は小耳に挟む。  まさかあんなロリ体型がそうとは思いもしなかった。  今では日本を支える財閥の一つヴァーミリオン。元々はイギリスの貴族。  その中でも最高傑作と呼ばれた令嬢クロエ。  クロードに入学が決まっていても不思議ではない。もう既に色々と結果を残している人物。  めんどくさいのに目を付けられてしまった。    「傲慢令嬢が相手になったら骨が折れそう」
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