4話 さとりへの答え

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4話 さとりへの答え

 全速力で走ったが、学校に着く頃にはもう遅刻が確定。  校門は閉まっており、教師二人が待ち構えていた。 「よー遅かったな問題児」 「連絡も入れず、遅刻とはいい度胸をしているな」  面倒臭いことに体育教師二人か、うーむ言葉だけだと絶対見逃して貰えない。  だとしたら行動は決まっている。  二、三歩下がって、軽く助走を付けながら走る。門に衝突しそうな直前で地を蹴りぬいて高く飛ぶ。  容易くと教師の背後に着地し、そのまま走って校内に入る。 「「あ、待って!」」と情けない声が聞こえたが、構っている暇はない。  教室に入ったら捕まってしまう。  屋上に直行し、休憩していたらひょっことさとりが来た。  一瞬、教師かと思って焦った。 「お前授業はいいのか?」 「少し抜け出すくらいならばね、私成績いいし、それにどこかの誰かさんが遅刻してきたお陰で授業所じゃない」 「嫌味か貴様」 「それでどうして遅刻してきたの?」  特に隠す必要もないし、そのまま先起こったことを教えた。  最初は面白がっていたがだんだんとか表情が曇り、苦笑へと変わった。 「なるほど、ヴァーミリオンの令嬢様か。相当強いんだね」 「強いってレベル越えている。超人の域だろ」  普通に考えればあの傲慢令嬢もイノセクト。  他の連中よりも優れたイノセクトって所。  敵に回したら非常に厄介。あの言い方を考えれば敵と見做されている可能性が高い。 「あ、そうだ。昨日誘ってくれたよな? その答えもう決めた」 「え、早くない? 昨日今日で決めれるの?」 「お前がどう思って通用すると言ったのか知らんが、一緒に行ってやる」    さとりは顔を伏せた、どうしたんだろうと? 覗き込もうとしたら急に顔を上げ、ガッツポーズを取っていた。  表情はいつもより明るく満面な笑みを浮かべていた。  彼女の笑顔に目が離せなくなった。年相応な顔立ちをしているが、それ以上に美貌が勝つ。  学園のアイドルとも言われているさとりの笑顔に、少なからず俺も見惚れてしまっていた。 「……そんなに喜ぶかね?」 「うん! 我妻君と高校生活送れるとか嬉しいに決まっているよ!」 「さいですか」  今確信したが絶対にこいつ天然の人たらしだ。  しかも自分の可愛さに気づいてないのか、平気でさっきのようなことを口走る。  多分、俺じゃなかったら心を奪われていたぞ?  でも、そんなの俺には関係ない、こいつの笑った顔を見るのも悪くない。  頬杖を付き、眺めていると、ポスッと肩を軽く叩かれた。 「そんなジロジロ見ないでくれる? 流石にちょっと恥ずかしい」 「可愛いかよお前」 「ッ!! 我妻君でもそんなこと言うんだね」  言ってからしまったと思った。考えるより先に言葉が出てしまった。  いや今のは仕方ない。流石に可愛かった。  逆にこれで可愛いと言わない奴がいるならば少し可笑しい。 「最後まで高校生活が送れるといいな、忘れているかもしれないが俺は無能だぞ?」 「能ある鷹は爪を隠す。君はそっちのタイプだよね。隠している理由があるんでしょ?」  その問いに答えず、沈黙をする。するとふふッと笑い。  こっちを真っ直ぐ見ていた。    「一緒に成り上がって欲しいとかも思わない。けれど()()()()()()()()()()」 「そこに関しては同感だ」  彼女の口から成り上がりって言葉が出てくるとは思いもしなかった。  少し驚いてしまった、どっちにしろ俺は成り上がるつもりはない。  まずできるわけがない。  ただ、さとりとの学園生活を楽しめればいい。  ここの部分だけ切り取ると、ただの青春したい奴みたいだ。  そんな感情は一切ないけどな! キーンコーンカーンコンっとチャイムが鳴る。 「そろそろ戻ろうかな、君はどうする?」 「放課後まではここにいるさ」 「分かったまた後でね」  手を振ってきたから振り返す。さとりは校内へと戻っていた。  また後でって、まさか一緒に帰る気か?    「能ある鷹は爪を隠す……ことわざを使いやがって、遠回しに頭いいアピールしやがって」  放課後のチャイムが鳴るまでの間、眠っていたらさとりが起こしに来てくれた。 「一回も教室に来なかったね」 「んあ? もう帰る時間か、悪いなわざわざ迎えに来て貰って」 「気にしない、気にしない」  ノリが軽いな、立ち上がり、さとりと一緒に帰路へ着く。  奇跡的に教師には見つからず帰路へ着けた。 「我妻君って学力的には大丈夫なの?」 「君ほどじゃないがそれなり学力はある方やぞ?」  あの学園からメールきた時点、確定で入学できるのも同然。  推薦に近い形と思っている。最悪一般入試で頑張る。推薦より一般入試の方がいいのでは? 「だったら安心かな、あ、私ここだから」 「おうまた明日な」 「バイバイ」  ◇  中学を卒業し、今俺たちは船に乗っている。  船には俺たち以外にも何人かいた、その中にあの傲慢令嬢はいなかった。  船は広い海を渡り、地図上には記されていない巨大な孤島へ止まる。  船を降りると学園の教師と思われる人が立っており、案内をしてくれた。  少し歩いた先に城と見間違えるほどに立派な建物が合った。  看板が立っておりクロード学園と書かれていた。  建物は白一色、学園は城並の大きさに豪華さ、流石は実力主義学園と云った所か。
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