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5話 クロード学園入学
「ようこそ我が学園に原石の卵共」
案内してくれた女性はこちらに振り向き、そう言った。
不思議と緊張感が生まれた、肌が少しピリピリするのが分かる。
改めて実感する、本当に実力主義の学園に来てしまったんだなと。
女性は一礼をし、校内を案内してくれる。中へ入ってみると無駄に広く、壁や床も真っ白。
下駄箱が見当たらないと思っていたら補足が入る。
「本校は基本的に土足なのでご安心ください。授業の一環でこっちが指定した靴を入って貰うことはあります」
ご丁寧に説明をしてくれた、感心をしている時、ここ本当に学園? と思える代物が合った。
左右の壁に何個もの甲冑が置いてある。まるで貴族の城のようだ。
「それでは体育館に移動しますので着いて来てください」
指示通り、後ろを着いていく、どうやっていくんだろうと思ったら真っ直ぐ行った先に、エレベーターがあり、そのまま乗り込む。
人数制限は大丈夫なのか? そんな心配は無用だった。
エレベーターの中も結構広く、全員乗ったのにまだ十数人は乗れるくらいの余裕は合った。
エレベーターは動き出し、上ではなく下――地下へと向かって動き出した。
ここの学園、地下まであるのか、ゆっくり動きやがて止まる。
扉が開かれるとまたまた広い空間を目の当たりにする。
上の空間と違い、流石にここは体育館らしく、床と壁は木の板。
奥地には教壇があり、一人の長身でありながらも、スーツがハチ切れそうなくらいの筋骨隆々の男が立っていた。
ここにいる何人かはその顔に見覚えが合った。
「理事長」
誰かが言った。それに釣られて他の連中も理事長という単語を溢す。
すると案内をしてくれた女性が理事長に向かって言う。
「静かにそんな所に立たないでください。新入生たちが怯えてしまいますよ」
「君中々失礼だよね? 口開くと毒しか吐かないのやめてくんない?」
「……それでは目の前にある席へご自由にお座り下さい」
理事長の苦言を軽く流し、席へと案内してくれた。
パイプ席が約三十くらいは置かれている、もう既に席へ着いている人もいる。
各々は移動を始め、俺とさとりは真ん中らへんの席へ座る。
「あれ? また会ったね!」
席に着いた瞬間、聞いたことがある声が聞こえ、恐る恐る声の主を探してみると。
偶然なのか、神の悪戯と云うべきか横にクロエが座っていた。
最悪だ! よりによってこいつが横かよ! どうするここは!?
脳内には二つの選択肢が出てきた、一つは軽く挨拶する、もう一つは無視をする。
選択はすぐ決まり行動に移す。
「あれ? 聞いているおーい!」
横にいる小学生くらいの見た目の少女が、応答を確認してくる。
ちょっとフルしかとするのは心が痛むなと思った時、バシバシ叩かれた。
前言撤回だ、心なんて痛まない! つうか肩折れる!! こいつ一体どんな力してやがる!?
「大丈夫?」
横から軽く揺すられる、もう片方は馬鹿の一つの覚えのように叩いてくる。
今左右で俺は天使と悪魔に挟まれている。
自分でも分かるくらいにだんだんと表情が歪んでいく。
「それでは今から入学式を始めます」
教師の言葉に俺らは教壇の方を真っ直ぐ見る。助かったと胸を撫で下ろす。
来たばっか、それに入学式が始まったばっかりだが、もう既に帰りたい! 他の所に転入したいと思い始めた。
「……それでは理事長からの挨拶です」
始まった、無駄に長い話の時間、学校の行事の中で理事長とか校長の話って嫌いなんだよな。話長いしつまらん。
寝て過ごそうか考えたが、隣には悪魔がいるから易々と眠ることができない。
「ようこそ我が校へお互いに高め合って成長して貰いたい。君らの中で特待生がいるから紹介をしよう」
特待生? そんなのは一人しかいないだろうな、左隣にいる悪魔のような少女。
性格は終わっているし傲慢だが実力は確か。
「名前を呼んだら壇上に上がってくれ、クロエ・ヴァーミリオン」
予想通り、クロエは返事をし、壇上へと向かう。
新入生代表のように挨拶を始めた、何事もなく終わると思っていた。
だが、ある意味――別でど肝を抜かされた。
「最後に私は学園史上最強であり唯一無二のSランク覇王を越える!」
次の瞬間、体育館には拍手の嵐が響いた。
「彼奴凄いな」
純粋に凄いと思えたし尊敬すらできる。学園史上以前に世界最強の男。
覇王を越えると堂々と宣言した、普通ならば無茶できないと非難され貶されるだろう。
だけど、クロエは違う、実力を持ち合わし学園に入って、更なる高みを目指している。
誰もがこいつならば新たな覇王になれるのでは? と期待をする。
特に教師陣ならばそうだろう。
「彼女のランクって幾つなんだろう?」
さとりが小声で聞いてくる。
実力では云えば相当高い、A〜Sの中間あたりが適切な評価だろう。
流石のクロエでもSランクまでは届かない。
「Sランク寄りのAって所じゃないか?」
「我妻君から見てもSじゃないんだね」
俺から見て以前に誰から見てもまだ届いてないだろう。
実際この目で覇王を見たことがあるわけじゃないからなんとも言えない。
越えることができるのか分からないが、確実に近づくことはできると思う。
「素晴らしい意気込みでしたね。是非是非頑張って欲しいですね」
生徒が意気込みを言ったのに棒読み?
まるでお前如きが越えられるわけないだろ? 精々頑張ってみろそんなニュアンスを感じた。
流石に考え過ぎかもしれない。
「これで入学式を終了したいと思います。教室へに案内よろしくお願いします」
◇
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