6話 適正検査

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6話 適正検査

教師の誘導で教室に案内された。移動している中で何グループかは別の部屋に行った。  今現状で分かっているのはさとりと俺含め、七人。  教室に入るTHE教室という内装だった。変わった感じはしない。  目の前には教卓があり、背面には黒板。そして縦三列、横二列に並べられた机。  あれ? 机一つ余るくない? 机の最後尾であり教室内の最奥に、ポツリと机と椅子が置かれていた。  完全にぼっちの席だ。最早嫌がらせを通り越して虐めだろ。 「よし君ら好きな席に座りたまえ」 「どうする?」  教師の言葉にその場の全員が戸惑う。誰がどこの席に座るか迷っているのだ。  見た感じ他の連中は知り合いがいなさそうだ。  今ここで唯一中学校が一緒だったのは俺らだけだろう。  さとりと隣同士になるのが自然。  だが、ここであそこの最奥の席を選べばぼっちの生活を送れるかもしれない。  袖が引っ張られる。横を見ると不安そうな表情を浮かべている。  ……目が合った。隣の席にしろという無言の圧を感じる。  近くの席に座り、続けてさとりも座った。他の連中も適当な席に座り、一人の少女が立ち止まっていた。 「残った席に座ってくれな」  少女はコクリと頷き、席の方へ移動する。横を通り過ぎた瞬間、鼻腔にほのかな甘い匂いがした。  教室だと云うのに艶のある白髪の髪が靡いた。思わず見惚れそうになる。  パーンという音と共に視線が教師の下へ集まる。 「はいそれじゃあ皆さん席に着いたので今後の流れについて説明します」  その一言に空気が少し変わる。さっきより一層緊張感が生まれる。  今後の流れか、何も考えずに入学したから聞いていた方がいいな。  少なくとも他の連中からすれば大事な話ぽいし、尻目でさとりを見ると真剣な表情で前を見ていた。  こっちにとっても大事なようだ。教師は言葉を紡ぐ。 「まずこれからクラス分けの適正検査をして貰います。後日にクラス発表をします」  適正検査をしてクラス分け、なんともこの学園らしいな。  じゃあ今のクラスはなんだと云う疑問は生まれてくる。聞いてみるかと言おうとした。  俺が喋るより先に誰かが質問をした。 「じゃあ今ここにいるメンバーはなんですか?」 「良い質問ですね。こちらに集まっているメンバーは大まかに実力が同じ人を集めています。もしこの検査でいい結果を出せば上に上がれます」  逆に云うと悪い結果ならば下に下がる。そもそもとして俺がいる時点で最底辺。  さとりと俺の実力が同じとは到底思えない。  学力もあるし、それなりに身体能力は高い。一体何を求められている?  ……教師の不適な笑みが少し不気味。 「それでは適正検査の説明をしますね」  教卓の上に水晶を置き……淡々と説明をしている。 「この水晶に手を(かざ)すと色が変わります。このように」  見本を見せるかのように水色の水晶に手を翳す。  次の瞬間、水晶の色が真っ赤へと変わった。離した瞬間色が元の水色へと戻る。 「赤、青、緑、紫、灰、白。この六パターンに分かれています。色が明るいほど評価が高くなります」  色が高いほど上の評価になるのか、今さっき赤だったから上のレベル。  あの水晶に何か仕組みが施されている。  この学園は何でもありかよ! 苦笑していると、もうすでに複数人が水晶の前に立っていた。  順番に手を翳していた、そして見事に白だった。  他がやっても同じ結果、残りは俺らを含め三人だった。  次にさとりが行くと少し変化し紫だった。他の連中が唖然している中、教師は目を見開いてた。 「お、凄いですね、今の所一番高いです」  さとりはその言葉を聞き、ガッツポーズを取ってこっちに戻る。  教師は笑っているが目は決して笑ってない。やっぱり()()()()()。  よし俺も行くかと立ち上がった時、後ろから軽快な足音が聞こえ、先越された。  白髪の少女――水晶が青へと変化する。軽々とさとりを越える。  喜ばしい内容、だが白髪の少女は無表情でクールに自分の席へ帰っていた。  そして最後は俺の番。流れ的に越えるだろと云う空気が流れる。  勘弁してくれ、俺は無能なんだよ、そんな期待をされても困るんだよな。 「君は一体どんな結果を出してくれるのかな?」 「そんな見せ物じゃないんすから、期待せんで下さいよ」  他がやった時と違い、俺には話掛けてきた。最後のトリからかもしれない。  それ以上に何かしら裏を感じるのも事実。  考えたって仕方ない、手を翳すと色が何回も変わり……黒へと落ち着いた。  え……黒――は? 説明もされてないし、他の連中も出てない。  ちょっと待てじゃあ一体どうなる? 助けを求めるように見る。  視線を逸らされた。おいおい! それでも教師かよ。  はいこれで適正検査は終了です」  完全に流されてしまった。仕方ないし席に戻ろう。 「なんか凄いね」 「何だその語彙力のなさは?」    さとりの言いたいことは分かる。それ以上に自分で驚きを隠せない。   「本日はここまでです。最初に配られた生徒手帳を見て、各々寮へ行って下さい」  ぞろぞろと立ち上がり移動を始めた。胸の内ポケットにある生徒手帳を出す。  生徒手帳と云えば紙を想像するだろう。だがここは違う。  流石実力主義学園と言った所――電子型の生徒手帳。  普通の電子のタブレットのように扱え、地図が載っている。   「学園だけど発展が進んでいるね」 「流石は色んな有望な人材を輩出してきた最強学園」  寮へ行くまでの間、さとりと他愛ない雑談をしている。 「ここが寮みたいだね」 「寮ってよりタワーマンションだろ」  寮がある場所に来てみるとそこには白色のタワーマンションが合った。  もしここが寮っていうならばどんだけ豪華なんだよ?  男子寮と女子寮とか分かれているのか? 地図はここを指している。  流石に階層で分かれているだろ。 「……えっと相部屋だね」 「普通高校生の男女を相部屋にするかね?」 「流石に他の所も同じだよ!」 「いやどっちにしろダメだろ!」
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