9話 正体がバレる!!

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9話 正体がバレる!!

今一体何が起きている? 理解するのに数分掛かってしまった。  そのくらいに突然始まった、先生が我妻君を襲い、いつのまにか吹っ飛んでいた。  攻撃が一切見えなかった。視認できないほどの速さで攻撃を放った。  普通避けることができない、決して我妻君も避けた訳ではない。  けれど、何事もなかったように平然と立っている、痩せ我慢とかではなく立っている。  どうしてそんな平然そうに立ってる? 相手は大人――しかも覇王。  並の相手ならば一撃で終わってしまう。  じゃあどうして彼は今立っている? 「模擬戦って先生とやるってことなんですか? 俺ら殺す気です?」 「案ずるな、オレも鬼じゃない、お前としか戦わない」 「十分鬼だろ!」  風切り音がした、気づいた時には先生の前には我妻君がいる。  どうやら攻撃を仕掛けたようだ、こっちも攻撃が見えなかった。  体育館が軋み、激しい乱打戦が巻き起こる、風圧で吹き飛びそうになる。  耐えながらも見ようとする、一瞬()()()()()()になった、戦っている所作を視認できる。  ほぼ互角と言っていいほどの打撃戦。  パンチに蹴り、そして時折フェイントが混ぜられたハイレベルの戦い。  決してFランクの生徒がやれる代物ではない、それこそAランク以上。 「彼奴一体何者だ?」 「どうして覇王と呼ばれた先生と互角に渡り合えている?」 「正しくイレギュラー」  シロさんの言う通りイレギュラー、ドンッと鈍い音が響く、また我妻君が吹っ飛ばされたと、その場にいる二人の当事者以外は思っただろ。  実際は違う、先生が後方へ下がらされた。 「お前どうしてあの時、放火魔を撃退しなかった?」  放火魔? 一体何の話をしているんだ? 先生は首をゴキゴキ鳴らしながらゆっくり近付く。 「そもそもとして、俺は()()何すよ、戦っても勝ってる相手じゃないと、思うのが普通じゃないすか?」 「そうか、だったらオレが鍛え直してやる!」  強烈な踏み込みと同時に蹴り一閃、体を捻って避けるが攻撃は来ない。  先生は蹴りを当たる直前で止めた、気付く頃には足払いをして床へと倒していた。  そのまま馬乗りで攻撃をしている。  もうここからの打開策はないと思っていた、だが我妻君は左手でガードをし、もう片方の手で攻撃をする。  半ば無理矢理体を捻って攻撃、先生は見事に防いだ。 「ごめんだね、俺は無能のままで十分」 「遠慮するな、そういえば名前を聞いてなかったな」 「山田太郎です」 「そんなありふれた名前の顔をしてないだろう!」  今度こそ万事休すと思われた時、我妻君は立ち上がり、今度は先生が床に倒れた。  先から攻撃の所作を見えるようにはなった。けれど、今の動きは全く見えなかった。  今度は反撃するかと思ったら、途方にもない所を急に走り出した。  敵前逃亡? 見えたが急に止まり、先生を思い切り睨む。 「今何をした? 全くオレでも見えなかった」  え、あの覇王すら見えなかった、尚更私なんかが見える訳がない。  脳裏に、我妻君に助けて貰った時の記憶がフラッシュバックをする。  イノセクトをバタバタと一撃で倒していた、あの時、攻撃力が高いと思った。  今となれば論点がズレてた、注目するのは速さだった。あの時も攻撃が見えなかった。  あれを見てから彼とならばこの学園で通用すると感じた、あながち間違ってはいなかっただろう。  現に先生とお互い引かない攻防をしている。 「流石にそろそろ辞めたいんすけど? いつまで模擬戦?」 「そうだな、圧倒的な決定打か、他の目からの勝敗がつき次第終了」 「あんた楽しんでるだろ?」 「そういうお前も口角が上がっているぞ?」  指摘をされ口元を隠す、多分無意識だと思われる。  彼は自分で無能と言っているが実際違う。  いつから私は彼を無能と思っていたのだろうか、認識を始めた時には既に孤立をしていた。  口癖のように無能と言っていた。  少なくともイノセクトのリーダー格の男子は無能と罵り、学校の人間も無能と認識をしていた。  そこに関しては私も一緒、今覇王である先生と渡り合っているからって、態度を変えるつもりはない。  ただ興味が湧いてきた。   「どうして僕たちと同じFランクなのに戦っているんだ」  男子生徒が嘆いた、シロさんはイレギュラーと言った。  そこは変わらないけれど根本的にズレている気がする。  次の瞬間、破裂音に近い音が体育館の内部に広がり、さっきと比べ物にならないほどの風圧。  全員軽く後方へ吹っ飛んだ。幸いにも怪我をすることはなかった。  お互いの顔面を殴り、ちょうど拳が交差している。  再び、思考がクリア、先よりもっと鮮明に。 「……アルド」  その名を口にした瞬間、動きが止まった。我妻君は私を凝視してくる。  クラスメートも一緒、この世界に生きているものであれば誰もがしる名前。 「覇王と対になる最強」  第二の覇王とも呼ばれる存在、いつから存在しているのか定かではない。  都市伝説に近い存在とされていた。先生は口角を上げて笑った。 「そうかお前がアルドか」    ◇ 「ほんま痛い、あの人手加減って云うもの知らな過ぎ」 「はいはい、静かに後動かないで!」  嘆いている彼に少し冷たく言い放つ、黙って手当を受けている。  あの後、先生と我妻君の勝敗は付き、ボロ負け。  最初の互角の戦いが嘘のように、先生の攻撃が我妻君を襲い、倒れた。  多分、この学園に保健室とか医療室はあると思うけど、連れて行かずに残りの人たちで軽く模擬戦をした。  その間、我妻君は気絶しており、先生が寮まで運んでくれた。  しばらく起きなかった、様子を見に来た時には起きてたから軽く手当をしているけど、ギャギャと煩い。  少しムカつくから痛くしてあげよ。  と、わざと包帯を強くキュッと縛る。  声にならない声で痛みに苦しんでいた、少しいい気味だと感じた。 「お前今のわざとだろ!?」 「そんなことするように見える?」  
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