4人が本棚に入れています
本棚に追加
先生
退屈から逃れるためなら何でもする。
信条というほどでもないが、それが行動原理だ。
選択肢があるときは、困難なほうを選ぶ。
安易に流れた瞬間、退屈はやってくる。
矛盾が生じたとしても、そこだけは一貫している。
必要があれば金持ちにもなったし、ホームレスにもなった。
ただ、群れるとだめだ。
互いに利用し合うくらいがちょうどいい。
情なんてものは、足枷にしかならない。
だが、あのとき想定外は起こった。
運命は自分で拵えて制御するものだが、読みきれなかったときがあった。
あいつに知られた。
どうするかを天秤にかけたとき、あいつがいたほうがより困難だ、と思った瞬間、道は決まった。
あいつは同じにおいがした。
退屈を憎む同志であると同時に、新たな緊張感を生み出す敵同士でもあった。
先生、などと呼ぶが、より単純で、より複雑な関係だった。
ほしいものは、お互いが持っている。
最初のコメントを投稿しよう!