悪魔王子の旦那様は今日もツンとデレている

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※※ ──フォレストフィールド王国 男は窓辺に凭れかかって降り注ぐ眩い太陽の光に淡く海のように透き通った碧眼を静かに向けている。 男の身長は百八十を優に超え、鍛え上がられ引き締まった体躯と鋭い眼光からは数えきれないほどの戦場を生き抜いてきた証のごとく、見る者に恐怖心と服従心を与える。 「……どこにいるんだ……」 太陽のように美しい金色の髪をもち、ピンク色の瞳の少女が男の記憶の片隅からいなくなったことは一度もない。 男は部屋の外から聞こえてくる足音に窓辺から身体を離した。 ──コンコンコンッ 「はいれ」 「失礼致します」 入ってきたブロンドの髪の男は一礼をすると主である男の目の前まで歩いてくる。 「ルーカス様、こちらが今度のパーティーの招待客リストです」 ルーカスと呼ばれた男はこの国では悪魔と同じ色とされる、珍しい漆黒の髪をかき上げながらブロンドの髪の男に目を向けた。 「忙しいのに悪いな」 「滅相もございません、ルーカス様こそ国王直々のご命令とはいえ……」 彼の従順な部下であり戦場においては右腕である、カイル=オリバーはくっきりとした二重の目を伏せ目がちにすると言葉を濁した。 「仕方ないだろう、兄上も重い腰をあげたのだからな。父上は早く世継ぎの顔を見て安心したいのだろう。それに悪魔王子と呼ばれる俺など誰も寄ってはこないさ」 「それは皆がよからぬ噂を信じているのと、ルーカス様のお人柄を誤解なさっているからでしょう」 「それはどうだろうな、俺は自分でも冷酷非道だという自覚がある」 「さようですか。ではご自分が美男子であられるという自覚も?」 「な、なんだと?」 急に戸惑った表情を見せ、僅かに頬を赤くする純朴なルーカスにカイルはふっと笑みをも漏らした。
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