悪魔王子の旦那様は今日もツンとデレている

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※※ 「わぁ……すごいわね」 王宮もさることながらダンスパーティー会場は思っていたよりもはるかに広く、豪華絢爛な内装と王宮楽団が奏でる美しい音楽に私は感嘆の声を漏らした。 「あの、お、お嬢様」 「ちょっと、ドーナって呼んでよね」 「あ……ドーナ、お嬢様」 「ちょっと、あなたはリリーお嬢様でしょ、しっかりしてよ」 「うぅ……っ」 ごった返している人混みをかき分けながら、私の隣にいる泣き出しそうなドーナに耳打ちする。 そして人の群れから逃れ、窓際までやって来ると、私はメイドから貰って来た飲み物を渡す。 ドーナはよほど緊張しているのか喉を鳴らしてグラスを空にすると、深呼吸をした。 私は会場全体に視線を走らせると上座に並んでおかれている椅子に目を向けた。 (……また王子様たちは来てないわね) 「あの……お嬢……ドーナ、わたくしはここでその、飲み物を飲んで寛いでいたらいいのよね?」 「そうよ、ダンスに参加する必要もないし、王子へのアピール合戦に参加することもないわ」 「わかりました、なんとかやってみます」 「それに万が一、誰かから話しかけられてもあなたの教養と知識ならうまく対処できるはずよ」 「だと良いのですが……」 「もう一杯飲み物貰ってくるわね」 「有難うございます……」 私はドーナから空のグラスを受け取ると、入り口の方へと足を向けた。 ──その時だった。音を奏でていた演奏がピタリと止まり、会場いる人々の視線が扉へと向けられる。 そして大きく重厚な扉がゆっくりと開かれれば、赤い絨毯を踏みしめながら王子が護衛と共に入って来る。
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