悪魔王子の旦那様は今日もツンとデレている

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※※ (こっちであってるわよね……) 私は事前に仕入れておいた王宮のメイドたちと同じメイド服に着替えると、王宮の東側に位置する建物の三階へと階段を登っていく。 「ラピス、しっかり隠れててね。いいって言うまで出てきてきちゃダメよ?」 「きゅうっ」 ラピスはひと鳴きするとメイド服のエプロンのポケットに深く潜り込んだ。  「さてと。思ったより迷いそうね」 事前にお父様から見せた貰った王宮の地図は頭に叩き込んできたつもりだが、こうも広くどこを見ても赤色の絨毯が惹かれた廊下が延々と続いていれば、方向を見失いそうになってくる。 (確か、この先の角を曲がって中庭を挟んだ反対側にルーカス様の自室があるはず……) 私の頭の中の地図は確かだったようで階段の階を上がるたびにメイドとすれ違う頻度が減り、代わりに見回りの兵士の数が増えていく。 私は廊下の陰き隠れると、見回りの兵士が階下へ下っていくのを確認してから沢山の扉が並んでいる長い廊下を真っすぐに歩いていく。 (間違いないわ、中庭が下に見える) 私はできるだけ足音を立てないように歩く速度を速めた。 その時──。 「……―カス様……エヴァンズの……」 (え?) 私は風に乗って聞こえてきたその声に思わず足を止めた。 目の前には沢山部屋が並んでいるが部屋の中からではない。 私はさっとあたりに視線を走らせた。 (あ、もしかして……バルコニー?) 私は廊下から伸びている細い通路にゆっくりと近づくと、柱の陰から声の方をそっとのぞき込んだ。 (──!)
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