悪魔王子の旦那様は今日もツンとデレている

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「──待て」 一瞬なにが起こったのか分からなかったが、月明かりに照らされた自身の影をみて、自分の首元に長剣が当てられていることに気づく。 (早い……っ、いつの間に……) 心臓はドクドクと音をたて、呼吸はできているのか分からない程に浅く早い。 「まさかネズミが紛れ込んでいるとは」 「…………」 (どうしよう……このままじゃ殺される……っ) 「顔を見せろ」 思わず背筋が凍り付くような低い声色に身体を震わせながら、私はぐっと顔をあげた。 その瞬間、夜風がバルコニーをさあっと吹き抜けていきルーカスの前髪を揺らした。 (!!) 私はルーカスのサファイヤのように美しく透き通った、碧色の瞳に思わず呼吸を止めていた。 (なんて……綺麗な碧い瞳なの……) 「……お前の名前は?」  どこかで会っただろうか? いやそんな筈はない。 ただ目の前のルーカスの双眸は私と目があった瞬間から驚いたように大きく見開かれている。 「その顔、王宮のメイドではないだろう?名前を言えっ!!」 私は静かに一呼吸おいてから唇を開いた。 「私はリリー……、リリー=エヴァンスです」 「なんだと?!」 「ルーカス様が母の名前を口にするのを聞いてしまいました」 「…………」 (おちついて、ゆっくりいつも通りに……) 私は両手を胸の位置まで上げ、攻撃の意思がないことを提示しながら背筋をピンと伸ばす。 そしてルーカスに向けられている剣先に最大限注視しながら、つま先にぐっと重心を込めた。 「あなたが……母の暗殺に関与してらっしゃったとは」 「知らないな」 「とぼけないで! さっき聞きましたわっ、マリアとあなたが母の名前を呼ぶのを!!」 私は大きな声をそう言うと身体を屈め、勢いよく踏み込むと、そのままカイルが差している剣に手を伸ばし抜いた。 そしてルーカスへと大きく振りかぶった。 「ルーカス様っ!!」 ──キンッ!!
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