悪魔王子の旦那様は今日もツンとデレている

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「俺はリリーとの結婚生活、うまくやれるだろうか……」 思わず吐露した不安は言葉に出すと、ますます膨らんで大きくなったような気がした。 「ルーカス様なら大丈夫です、一緒に過ごされるうちにリリー様もきっとわかってくださるはずです」 「だといいのだが……」 「今夜はお疲れでしょう、ごゆっくりおやすみください。僕はそろそろ失礼いたします」 「ああ」 パタンと閉じられた扉をみながら、俺はまたため息を吐きだした。 「はぁああああ……」 俺の心の中にずっと棲みついていたリリーにようやく出会えたことに舞い上がりつつも、これから夫として一人の男としてどうやってリリーに愛を伝えたらいいのか見当もつかない。 「いつ好きだと言えばいいのだ?」 「あ……いや、その前に俺とどこかで会ったことがないか聞いてみる、か?」 「いやダメだ……あの愛らしいリリーを前にうまく話せる自信などない」 俺は鏡の前に立つと自身の姿を映し出した。 そこには悪魔と呼ばれる黒髪に眉間に皺を寄せた見慣れた顔が映っている。 「せめてこの黒髪が……元のブロンドに戻ればな」 十歳を過ぎたあたりからだろうか。俺のブロンドの髪は襟足から少しずつ黒くなり始め、数年で真っ黒になった。理由はいまだにわからない。 (腕のいい調合師だったリリーの母が生きていれば……治せたかもしれないが……) 俺の黒髪を悪魔の呪いだという者もいれば、悪魔の生まれ変わりだという者もいる。 (本当に悪魔のようだな……) 「こんな悪魔王子と呼ばれる俺があの麗しいリリーの夫か……」 俺はぶつぶつと独り言を呟いていたがキリがないと思い、ベッドにゴロンと寝転がった。 「……いつか愛してると伝えられるだろうか」 ようやく会えたのだ。 もう誰にも渡したくもない。 俺だけのものにしたい。 俺だけのリリーに。 「……まずは一緒に過ごしてみる、か……」 今夜はとても月が綺麗だ。穏やかな優しい光を彩るように無数の星が競うように瞬いている。 俺はリリーとの再会に熱い想いを馳せながら、静かに目を閉じた。
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